この記事の連載

自分と朗読する人だけの特別な空間を作ることができる

――小林さんは舞台での朗読も経験されていますが、そういったものと、今回のAudibleのような朗読とは違うものですか?

小林 目の前にお客様がいるところでの朗読は、セリフではなくても、やっぱりどこか演劇的な要素があると思います。音楽がかかるタイミングもあるし劇場の雰囲気も、読む作品によって変わります。もちろん私自身、舞台に出る前に「間違えないように」とか「噛まないように」という緊張感をすごく感じますし。

――演劇的。

小林 いっぽうでAudibleの朗読は映画に近いかもしれません。間違えてもやり直しがききますし(笑)。最終的にお客様に聞いてはいただくけれど、実際に目の前には今お客様はいないというところも、映画の撮影と似た感覚がありますね。

――それぞれ、醍醐味が違うわけですね。

小林 でも、お客様の前で読むのは、その瞬間だけのハプニングという楽しみ方もありますよね。Audibleのような作品は、聞きたい時にいつでも聞いてもらえるという利点がありますし、自分と朗読する人だけの特別な空間を作ることができるのはすごく大きな魅力ですよね。

――今回小林さんが朗読された『センス・オブ・ワンダー』はどんな空間で聞いてもらいたいですか?

小林 せっかくですから、やっぱり静かなところで集中して、イメージを膨らましながら聞いていただきたいですね。自然に囲まれた外でもいいですし。作品の美しさと力強さを味わう、特別な時間を楽しんでほしいです。

――Audibleの朗読には、また挑戦されたいですか?

小林 「次はこの作品が読みたいな」というものがあるんです。

――どんな作品ですか?

小林 具体的にはまだ秘密ですが、すごく好きな本があって。翻訳もとても素敵なので、Audibleで聞けたらいいなと思って。自分が朗読したいというより、こういう素敵な物語があるんだということをたくさんの方に知ってほしいんです。私自身、知人に勧められて読んだんですけど、すごく気に入って人にも勧めて。読んでくださった方も「すごく面白かったです」と言ってくれたんですけど、まだ足りない(笑)。

 こういうとき、作品を紹介するために書評のような形をとると、書く人間の主観がメインになって「こういう筋で、こんなところが面白いです」ということくらいしか伝えられない。「この本はこんなに素敵なんです」を伝えるには、Audibleで丸ごと聞いてもらうのがいいのかな、と。

2025.04.22(火)
文=釣木文恵
写真=杉山拓也
ヘアメイク=尾花 ケイコ(PINKSSION)
スタイリスト=三好 マリコ