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「嫌よ嫌よも好きのうち」は間違った認識!

茂手杉 ただの言葉あそびのように聞こえますけど、どういう意味ですか?

モヤパン まずは「NOはNO!」について説明するわ。みんな「イヤよイヤよもナントカ」って聞いたことない?

ヒカル 「イヤよイヤよも好きのうち」だろ!

モヤパン そうそう! 「嫌よ嫌よも好きのうち」っていう古い迷信みたいな言葉。この言葉をまともに信じて「口では嫌だと言っていても、本心では嫌がっていないはずだ」と解釈する人がいまだにいるんだよね。AVなんかでも、「イヤだ」「ダメ」とか言いながら、性行為を積極的に受け入れているような描写があったりするけど、ああいう表現がは演出だから、鵜う呑のみにしちゃいけないわ。「嫌よ嫌よも好きのうち」なんて間違った認識を改めるためにも、改めて「NOはNOなんだよ! 本心から嫌なんだ!」なんて当たり前のことをしっかり意識してほしいの。

コマチ でも、なんでそんなふうに解釈するんだろう。

モヤパン 男女差別がひどかった時代の名残なのかしらね。女性が性行為に関する自己決定権を堂々と主張できなかった時代には、性行為に積極的な同意を示すと「はしたない」とか「みだらだ」なんて言われただろうから、そもそも同意の意思を示せなかったでしょうね。それと同時に拒絶の意思表示も本気に捉えられなかったんじゃないかしら。

コマチ でも今は令和だよ! いつまでそんな昔の考えに縛られなきゃいけないの?

モヤパン そうね。現代は男性も女性もその他の人も、みんなが平等に性の自己決定ができる時代…のはずよね。「嫌よ嫌よも好きのうち」なんて文化は20世紀に置いてきたものとして、これからを生きるみんなは、きちんと「NO」という言葉は「NO」という意思を示しているんだと理解してね。YESはYES! これはどういう意味かと言うと、明確に肯定する言葉(YES)がないと性的同意を示したことにはならないよっていうこと。

ヒカル そんなの当たり前じゃん。

モヤパン じゃあ質問! ヒカルくん、例えばあなたが好きな人と2人きりの場所でいい感じになったとします。「キスしていい?」、こう聞くと相手は恥ずかしそうにモジモジしている! さあ、ヒカルくんならどうする?

ヒカル 「あ、これはイケる!」と思うね。相手もホントはキスしたいけどはっきり言うのは恥ずかしいんだ。

モヤパン ほら! 明確なYESを取ってないのに、勝手にYESだと思い込んじゃってる。それじゃ性的同意が取れていないよっていうのが「YESはYES!」の意味なのよ。

茂手杉 確かに、相手はヒカルを傷つけずに断るセリフを考えてモジモジしているのかもしれないね。

生徒B デートの前ににんにくを食べすぎて、口臭を気にしているのかも。

ヒカル マジかよ…。それならそうとはっきり言ってくれればいいのに!

モヤパン どっちにしろ相手が黙っていたり、明確に答えなかった場合、それは同意にはならないわ。ちゃんと積極的なYESを相手が発した場合にのみ同意がとれたと解釈するべきよ。

茂手杉 YESと答えた側が酔っ払っていたり正常な判断ができない状態だったらどうなるんですか?

モヤパン するどい質問ね。相手がお酒に酔っていたり、眠っていたり、意識がモウロウとしている状況で得た同意は同意になるかしら?

コマチ 頭が回っていないのに、冷静に判断できるわけないじゃん。そんなの同意したってことにされたら困るわ。

モヤパン そうよね。そもそも同意をした人自身が、これから自分が何をするのかよくわからないまま同意をしたら性的同意の意味がないわよね。本人が何をすることに対して同意を求められているのかをきちんと判断できる状態で取られた同意でないと、性的同意が取れたとは言えないから注意してね。相手が判断能力のある状態で発した明確なYES以外は性的同意とは言えないっていうことがわかった?

ヒカル 勝手に空気を読んで「これは相手もしたがってるな」なんて思い込むと大変なことになるもんな。

モヤパン そうね。相手の気持ちをおしはかることはコミュニケーションにおいては大切なことかもしれないけど、性的行為という相手を傷つけてしまうリスクのある行為に関しては、しっかりした同意を取らないといけないっていうことは忘れないでね。そして同意がないときでも、腟の中が濡れたり、勃起・射精したりといった生理的な反応が本人の意思とは関係なく起こることがあるわ。そういった性的な反応があったとしても、「喜んでいる」「同意している」ということにはならないのよ。他にもちまたには「相手がこんな仕草をしたらOKサインだ!」なんて間違った言説があふれているから、そういうのを見たり聞いたりしたときは「NOはNO! YESはYES!」を思い出してね。

■性的同意がとれていない例

積極的なYESが帰ってこない

正常に判断できる状態にない

性的同意の3つのポイント

モヤパン イヤよイヤよはホントに嫌(拒否)なんだという「NOはNO !」、明確なYESのみが同意だよという「YESはYES !」。これが性的同意を考える上で当たり前の前提となるの。その上で、性的同意が成立するための3つのポイントがあるから覚えてね。

  • ポイント1:非強制性(NOと言える環境が整っていること)
    同意を求められた側が「NO」と言える環境のもとでなければならない。脅迫されていたり、プレッシャーをかけられたりして、相手が拒否できない・しづらい状況での同意は同意とは言えない。
  • ポイント2:対等性(社会的地位や力関係に左右されない対等な関係である)
    同意をとる側・とられる側が対等な立場であること。2人の力関係が不平等(支配・被支配の関係性)で、NOを示すと不利益を被る可能性があるような状況下での同意は同意とは言えない。
  • ポイント3:非継続性(1つの行為への同意は他の行為への同意を意味せずそ の都度確認が必要)
    一度の同意がいつまでも・どこまでも効力を有するわけではない。毎回、そして段階ごとに性的同意を取らないといけない。またいったん同意をしたあとで気が変わったときには行為の途中でNOと言ってもいい。

2025.02.20(木)
文・イラスト=セイシル製作チーム