この記事の連載
映画『ゆきてかへらぬ』インタビュー【前篇】
映画『ゆきてかへらぬ』インタビュー【後篇】
自分自身も本能的なタイプ
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――岡田将生さんが演じた小林秀雄とは、どんな感覚を共有したのでしょう?
小林との場合は、何がすごく違うかというと、難しいですね。頭で考えて技術的に演じるというものではないので、泰子として小林と共存していかないと、ただセリフを言っているだけになってしまいます。
やはり相手の心にお互いが片足を突っ込んで行かない限り、ただ綺麗なシーンがいっぱいなだけの作品になってしまう。だから目線のやり取りなどをすごく丁寧にすることを意識していましたね。
――ストレートに聞きますけど、広瀬さんから見て、中原中也と小林秀雄はどちらが魅力的に感じましたか?
中也かな? 小林からは、すごく哲学的な反応しか返ってこないような、すごく論理的というか。中也のほうが本能で生きているというか、動物的に生きてる気がするんです。自分自身も本能的なタイプなので。
小林のような論理的過ぎる人には、ちょっとイラっとしちゃいそう(笑)。同じ温度感でいてくれる人がいいですね。それと中也みたいに動物的な人のほうが、やっぱりちょっと面白いですよね。なんか野生児を見ているみたいなところがあって。
――ただ本能的に生きている同士だから、泰子と中也はぶつかってしまって、小林秀雄のほうに行ってしまった。
もしかすると気分転換だったのかもしれませんね(笑)。泰子にとって小林は、すごく都合のいい人だったんだろうと思います。小林にとってもお互いに。
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――長谷川泰子は中原中也に対しても、小林秀雄に対しても、愛情はあるけれど、どこか醒めた部分もあるようにも思えます。
中也に対しては、泰子は恋愛っていうよりも、もう自分の一部にもなってしまった人、というところがあった気がします。恋愛とかパートナーとか、そういうことでもなくて、「中也!」という存在で、それ以上でもそれ以下でもない。自分の一部になってしまった人。
だからこそ離れられないというか、執着してるというか。中也も泰子に執着しているけれど、泰子も中也に執着していたと思います。
そして、中也が泰子を見ている目と、中也が小林を見ている目は同じ。小林は私を見ながら、私の奥にいる中也を見ているのを演じながら感じましたね。視点のピントを合わせているところが、みんな違うというか。
泰子は中也を見ないようにして、ピントを合わせているのは小林だけ、というような。やっぱりそこもちょっと歪な三角関係という感じ。みんな1枚フィルターを入れて、それぞれを見ているんですよね。
だからいつになっても私と小林の間には中也がいるし、中也と小林の間には私がいるし、という常に一つ挟んでいる感じがすごく面白いなと思いました。
『ゆきてかへらぬ』2月21日公開
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大正末期の京都。駆け出しの20歳の女優、長谷川泰子(広瀬すず)は、17歳の放蕩学生、中原中也(木戸大聖)と出逢う。虚勢を張りながらも惹かれ合う二人は一緒に暮らし始め、東京へ向かう。そこへ東京帝大でフランス文学を学ぶ小林秀雄(岡田将生)が訪れる。小林は中也の詩人としての類稀な才能を見出し、中也も小林に一目置かれることを誇りに思っていた。芸術を論じ合う男たちの仲睦まじい様子を目の当たりにして、泰子は複雑な気持ちになる。しかし、本物を愛する小林もまた泰子の魅力に魅入られていた――。『ツィゴイゼルワイゼン』(80)などの名脚本家、田中陽造が40年前に書いた幻の脚本の待望の映画化。監督は『サイドカーに犬』の根岸吉太郎。
出演:広瀬すず、木戸大聖、岡田将生
監督:根岸吉太郎 脚本:田中陽造
©︎2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会 配給:キノフィルムズ
公式HP:https://www.yukitekaheranu.jp/
公式X(旧Twitter):https://x.com/yk_movie2025/
公式Instagram:https://www.instagram.com/yukitekaheranu_movie/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@yukitekaheranu_movie/
衣装協力
ジャケット 25,300円 パンツ 23,000円(THE TOE/PR01.TOKYO 03-6805-0904)
ブーツ 209,000円(クリスチャン ルブタン/クリスチャン ルブタンジャパン 03-6804-2855)
リング 1716,000円(メシカ/メシカジャパン 03-5946-8299)
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2025.02.15(土)
文=石津文子
スタイリスト=丸山 晃
ヘアメイク=奥平正芳
写真=佐藤 亘