ふつうの女子が感じる「難しそう」を払拭してくれる本

 「外あそび」「外ごはん」という言葉がいい。そう思ってこの本を手に取った。

『NATURE LESSON BOOK 外あそび&外ごはんをはじめよう』

 最近本屋の店頭ではたくさんの登山本、アウトドア本が並んでいる。

 日帰り向けの低山本から、テント泊、縦走、キャンプ、BBQなど、ありとあらゆる山を楽しむ本が目白押しだ。富士山や屋久島などは、赤本のように年度切り替えで毎年発行される人気ぶり。山登り好きとしては嬉しい限りではあるけれど、アウトドアに縁の無い女子には「難しそう」という印象も持たれやすい(全然そんなことのない本もたくさん出版されているのだけれど)。

 この『NATURE LESSON BOOK 外あそび&外ごはんをはじめよう』は、まさにそんな「難しそう」のイメージを払拭してくれるような本じゃないかと思う。

 まず目に飛び込んでくるのは写真集のような素敵な写真たち。春夏秋冬それぞれに、外あそびのシーンやおすすめの外ごはん、さらには使いやすい鍋のコレクションや焚き火のおこし方まで、伸びやかな空気感を伝えてくれる写真がふんだんに使われている。

 あとから気付いたのだけど、著者のnoyamaさんというのは4人で活動されている出版・イベントユニットで、その中のおひとりが野川かさねさんという、ちょくちょく写真をお見かけする好きな写真家の方だった。山小屋を紹介している『山と山小屋』(平凡社刊)の写真で初めて知り、わたし自身は写真については全く素人ながらも、写真の雰囲気というかその空気感が素敵だなあと感じていた。

「もうどれだけおいしいんだろう……!」と妄想が膨らむレシピ

 外あそびの装備や持ち物リストを基本としたルールも紹介してくれるのだけど、四角四面の知識としてだけではなく、女子目線を忘れない、簡単に言うとがんばりすぎない気持ちが感じられる。もちろん山だから油断は禁物だが、根底には「外に出ることを難しく考えないで!」という思いがバシバシ伝わってくる。

  後半の外ごはんのページでは実に実にオシャレでおいしそうな外ごはんのレシピが軒を連ね、外へ、外へおいで~~と読んでいる者を誘ってくる。料理研究家、山戸ユカさんがメンバーなのでおいしそうなのは当然のこととしても、写真や作り方を見て想像するだけでも誘惑に負けそうなのに、これを外で作って外で食べる、と思ったらもうどれだけおいしいんだろう……! と夢と妄想がどんどん膨らむ。明日も仕事なのに。ページをめくればめくるほど外ごはんの誘惑が追いかけてくるのだ。

 キャンプも焚き火も、そしてハイキングも、経験のない人にとって最初の一歩はものすごく勇気がいることだろう。だけど、パラパラ、ページをめくっていくうちに、頼りになるお姉ちゃんたちがあっちからこっちから「わたしたちはこんな風に楽しんでるよー」と教えてくれているような気がする。正しい楽しみ方、なんてものはなくて、それぞれがそれぞれの方法で外あそびを楽しめばいいのだ。

「みんなと同じ」なんて無理して好みを揃えなくていいし、そこで何をするか、何を楽しむかもそれぞれ自分次第。なんでも手を伸ばしたら届く街の中とは違って、自然の中には何もない。厳密には、何もないわけではないけれど、街にあるものは何もない。そこに何を持ち込むか、また何を持ち込まないか、と考えるところから、外あそびの楽しみ方はきっと無限大に広がっている。

「こんなこともしてみたいなあ~」夢がどんどん大きくなっていく。……まるでこの本、女子の野望の塊みたいだなあ。

安田有希
山好き旅好き犬好きの書店員。本をきっかけにして人と人との繋がりを作れたら、との思いから今年から開催の「神奈川本大賞」(外部サイト)実行委員も務める。紀伊國屋書店横浜みなとみらい店(外部サイト)勤務。

外あそび&外ごはんをはじめよう

著・noyama
本体1,400円+税 文藝春秋刊

» 立ち読み・購入はこちらから(文藝春秋BOOKSへリンク)

2014.05.08(木)
文=安田有希