“ありえない”色と、可愛い立体感にこだわりました
――これ、すごく大きいですよね。そして、形もそうですけど、色がリアルすぎないところが可愛いですよね。
西本さん そう、“可愛さ”にはすごくこだわりました。実際、綿の入れ具合で立体感がとっても変わってしまい、パンパンに詰めすぎちゃうと可愛くないんですよ。中のひだの部分も、グロテスクになりすぎない工夫をしたりと、そこの調整は大変でしたね。母にできあがったものの写真を送ってもらって、祖母に伝えてもらって調整してもらうことを繰り返しました。
色に関して言えば、肌色にするのはリアルすぎるし、かといって、ピンクは使いたくなくて。実際、「自分のは、きれいなピンク色じゃない」と、色とか形にコンプレックスを持っている方が少なくないんです。だから「みんなそれぞれ色は違うし正解なんてないんだよ」という意味で、このようなありえない色を選びました。また、これは一つひとつ手作りなので、どうしてもそれぞれ多少のゆがみや形の違いが出るんですが、それにより「形だって皆一緒じゃないんだよ」ってことを伝えられるといいなと思っています。
――デザインでこだわった部分はありますか?
西本さん どうしてもクリトリス部分を取り出せるようにしたかったんです。皆さん、クリトリスを表面的なものだと思っているんですけど、本当はペンギンのような形をしていて神経が張り巡らされているんだよ、というのを説明できるようにしました。そして、取り外しはできても説明するときには取れないように、ゴムバンドをつけました。
カラダの正しい構造を知ることで、心地よさを理解しやすくなったり、不安を取り除くこともできるんじゃないかなと思っています。
自分の体を知るためのアイテムとして、どんどん広めていきたい
――販売を始めてから、どんな反響がありますか?
西本さん 婦人科のドクターで、動画で発信をされている方が使いたいです、とおっしゃってくださったりしています。あとは、泌尿器科のドクターや性教育に関係している方、フェムケアブランドさんなど体について情報発信をされている方が購入してくださっています。まだ始まったばかりなのでこれからだとは思うんですが、とても嬉しいですよね。
あとは、教育現場や女の子がいる家族のサポートになれたらと思っています。助産師さんや、性教育団体さん、そして現在海外のセクソロジストの方とも連絡を取り合っているので、横の連携をどんどん広げていきたいと思っています。
――性教育や自分の体を知ることは、まだまだタブー視されているところがありますが、とても重要なことですよね。
西本さん 自分の外陰部を見たことがないっていう人が本当に多いんです。最初に、祖母にこれを作ってほしいと伝えたときも、「これなんや?」と言うので、おばあちゃんのそこにもついているもんや」と丁寧に説明しました(笑)。まず自分の体を知ること、そして知った上でパートナーや家族、大切な人と対話するために、楽しく、わかりやすく伝えられるツールとして、この「ばあばるば」が広がっていくといいなと思っています。
――今後はどのような展開をしていきたいと考えていますか?
西本さん 「ばあばるば」を企画していたときからの構想なんですけど、やっぱり男性器もセットであるといいなと思っています。
他にも言葉だけじゃ理解しづらかったり、とっつきにくいと感じているものを、わかりやすく楽しく伝えるためのアイテムや、対話できる場を検討していきたいと思っています。
制作者・西本さんのおばあさまより
「女性が自分の体を知ることは大事」
「私たちの頃は、学校で生理のことは習ったけど、親とも友達ともそんな話をしたことはなかったね。生理用品も今よりもずっと品質が悪かったからよく経血が漏れて下着が汚れたし、そうなったら隠れて洗っていて、生理痛がひどくても我慢して、周りに言ったことはなかったよ。女性が自分の体のことをしっかり知るのは、自分のことなんだから、とても大事だと思います」
西本美沙(にしもと・みさ)
大学卒業後、PR会社を経て2011年にドワンゴ入社。広報・宣伝業務を担当。会社勤めの傍ら始めたブログをきっかけに、女性の体や性を取り巻く環境に対する関心が高まり、ウェブメディア「ランドリーガール」を開設。2019年、生理など女性の悩みに特化した記事やアイテムを提供する「ランドリーボックス」を設立。
2024.12.11(水)
文=増本紀子(alto)
撮影=深野未季