芝居のために自伝や評伝、何でも調べます

セントラルパークの白木蓮の前で『LIFE』のカメラマン、エリオット・エリソフォンが撮影。

 私は、何でも調べるのが好きで、舞台で実在の人物を演じるときなんかは、自伝や評伝から、そこに出てくる関係書物まで、ものすごく調べます。ビデオも見ます。なぜそんなに? と思われるかもしれないけれど、芝居っていうのは、その人がどういう人かわからないとできないんです。それに私、子どもの頃から本を読むのは好きなの。戦争中なんかは、本屋に本がなかったから、手元にあった落語の本を繰り返し読んだりしました。本を読むと、いろんなことを想像できるでしょう? 知らなかったことがわかるでしょう? それがいいの。「世界ふしぎ発見!」でも、昔読んだ本や、小さい頃に想像したことの中から答えが出てきたりすることもあるんです。

 舞台で、マリア・カラスを演じることになったときは、彼女の体重が108キロあったときの声と、そこから50キロ痩せたあとの声を聴き比べました。彼女は、太っていたときは「世界一無様(ぶざま)なオペラ歌手」と呼ばれていたのに、痩せてからは、一転、「世界一エレガントなオペラ歌手」と言われるようになったの。1974年に初来日して、全国を何カ所か回ったとき、私も好運なことに、その東京公演を観ることができたんですが、彼女の何が素晴らしいかって、その立ち居振る舞いのエレガントなこと! 髪の毛を大きく束ねて、首の周りにシフォンが揺れて。お辞儀の仕方だけでも、「あっらー」と、憧れちゃうくらい、綺麗なの。周りにいた音楽学校の生徒は、「音が半音下がってる」なんて言ってましたけど、そんなことはどうだっていいの。正しい音程を求めるなら、レコードを聴けばいいんです。それよりも、舞台の醍醐味は、その人の、生の迫力を味わうことだと思います。

◆黒柳さんの熱弁はまだまだ止まらない。ポール・マッカートニーへの共感、「徹子の部屋」の長寿の秘密などについて語ったこの続きは、CREA5月号で掲載中。

黒柳徹子 (くろやなぎ てつこ)
東京都乃木坂生まれ。東京音楽大学声楽家卒業後、NHK放送劇団に入団。NHK専属のテレビ女優として活躍し、フリーに。1984年ユニセフ親善大使に就任。今年39年目を迎えた「徹子の部屋」は、4月1日から正午に放送。新たなお昼の顔となっている。

2014.04.21(月)
文=菊地陽子
写真=吉田事務所

CREA 2014年5月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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