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 ナポリ湾の島の中で最も小さなプロチダ島はイスキアからフェリーで20分ほど。

 朝から昼過ぎにかけて多くの漁船が行き交う漁師の町で味わう新鮮なシーフードディッシュと地元の人たちとの触れ合いに心躍る島旅。


人々の温もりを感じながら町を巡る楽しさ

 小さな車でも運転手がひやひやしながら通り抜ける極端に狭い路地、花で彩られた民家の玄関先など、島の暮らしのシーンに出会えるのが旅の楽しさ。

 気ままに町歩きをしていると「このレモン持っていって」と地元の人に声をかけられ、家の庭でなっていたものなのか、思いがけないお土産に嬉しくなる。

 港に出ると漁船が行き交い活気に満ちており、この光景がプロチダのシンボルでもある。

 主たる産業が漁業で船乗りが多い。となると旅人には嬉しいシーフード天国。

 コリチェッラ海岸に面したリストランテ「ラ・ランパラ」を訪れると、イワシやマグロなどプロチダの海で水揚げされた魚をシンプルに調理した家庭的な料理が味わえ、美味しさがストレートに胸に響く。

 オーナーの父が開いた店で、自らが漁船に乗り釣った魚をメニューとして出していたそう。

 また、島の南西、ヨットが停泊するマリーナ・キアイオレッラにある「ホテル・リストランテ・クレシェンツォ」では「5月~6月はカツオ、7月はマグロ、9月になるとカンパチが美味しくなるよ」とシェフが話してくれた。

 プロチダのレモンをたっぷりかけて味わうカルパッチョや赤エビ、シャコの旨みが凝縮した甲殻類のパスタなど多彩な料理で楽しませてくれる。

 レストランを訪ねても町を歩いていても、地元の人たちの温かい人柄に触れられるプロチダは、観光地化されすぎていないところが居心地よい。

 予定をあえて決めずに、島の緩やかなリズムに身を任せながら“Dolce far niente(何もしないで過ごす甘美さ)”を満喫できる島なのだ。

 2022年にイタリア文化都市に認定され、観光業に助成金が出てリノベーションするホテルがあったりと少しずつ変化が起きているなか、ツーリストたちを垣根なく受け入れる温もりは変わらず続いていくだろう。

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Column

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2024.09.19(木)
文=梅崎奈津子
写真=橋本 篤
コーディネイト=祝 美也子

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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