――では、本意はどこにあるのでしょうか?

小池 例えば公開年の2022年当時に3歳だったお子さんはいま5歳だし、いま5歳のお子さんは、5年後には10歳を迎えますよね。そのとき、お子さんが足を運べる環境の映画館でこの作品がかかっていることが僕らの本意であり理想です。リアルタイムでの上映を体験することの出来なかった未来の観客に、やはり映画館を通じてこの作品を届けたい。それがまずひとつです。

――なるほど。そのほかには?

 

小池 当たり前の話ですが、まだご覧になっていない今現在の観客、特に若いみなさんに一人でも多く届けたいという思いです。例えば、去年受験生だった学生さんは、今年なら観られるかもしれない。人によっては、もしかしたら夏休みや正月休みがベストなタイミングではない可能性だってある。劇場が閑散期と言われるような時期に公開したほうが、足を運び易いかたもいるかもしれない。

 今回の復活上映では、新グッズとしてTシャツ、ジャージ、ユニフォームのキッズサイズを販売します。近年、子どもたちがバスケに触れる機会やチャンスが増えているような気がします。子どもたちが公園でバスケをやっている風景もよく見かけます。本作は、そんな子どもたちの間で、「何か面白いらしいから観に行こうぜ」という広がり方をしてくれるのが作品にとって一番幸せだと思っています。

 グッズの売上云々も大事ですが、それよりも、例えば子どもたちがTシャツを着てくれて、「それ、観たよ。面白かったよね」みたいな会話が生まれてくれることを期待した或る種の「願い」を込めて作られたグッズなんです。それが次の世代の観客にバトンを渡すことにも繋がるはずだという。

多くのバスケット選手に影響を与えてきた『スラムダンク』

――本作は2014年に制作が決定し、コロナ禍を挟んで公開まで漕ぎ着けました。その間、世間におけるバスケットシーンの温度も大きく変わった気がします。

2024.09.08(日)
文=内田正樹