文芸評論家の著者が、かつてIT企業で働いていた時に直面した「労働のせいで本が読めない!」という悩み。その原因と解決策を探るべく、日本人の仕事と読書の変遷を辿った本書が大ヒット中だ。
「最初は『読書術本を読み解き、読書観の遷移を書いてほしい』と依頼したのですが、著者から『読書論だけではなく労働論も書きたい』と、このタイトルをいただきました」(担当編集者の吉田隆之介さん)
明治時代に自己啓発書が生まれ、大学生が増えた大正時代は夏目漱石がベストセラーに。戦前・戦後の出版事情から、司馬遼太郎が読まれた高度経済成長期、女性作家が台頭したバブル期を経て現代まで。労働と読書の関係性が丁寧なリサーチを基に解き明かされていく。そしてSNSや動画を見る時間はあるのになぜか本は読めないという現代人の悩みについて「ノイズ」というキーワードを用いて答えを導き出している。
「『疲れてスマホばかり見てしまうあなたへ』という帯のコピーが刺さった人が多かったようです。書店では新書の棚だけではなく、店頭やビジネス書のコーナーにも置いていただけました。社会の中で意思決定権を持っている方にもお読みいただき、趣味の時間を持てないような働き方を変えていくべきではないかという著者の提案について考えてほしいです」(吉田さん)
なぜ働いていると本が読めなくなるのか(集英社新書)
定価 1,100円(税込)
集英社
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2024.07.29(月)
文=長谷川 未緒