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4つの声を使い分ける必要があったアンナ役

――今回収録はおひとりでやっていったんでしょうか?

 そうなんです。ずっとひとりでやったので、相手がいない不安感がありました。尺に当てはめることが何より難しくて、合わせる技術に苦労しました。そんな私に、音響監督の三間雅文さんがめちゃくちゃ親身になってくださったんです。実際にやって見せてくださったり、台本に描かれていないことまでちゃんと設定を教えてくれたり。とても寄り添ってくださる監督だったので、安心して取り組めました。……でも(公開前の)今の段階で、まだ「あれで大丈夫だったかな?」と思うところもあるんですが……。

――ご苦労話が嘘のように、何の違和感もなく完成作に見入ってしまいました。

 本当ですか!? うれしい~。私、声が低いのでアンナの幼少期の高めの声を出すのが本当に難しくて、特に苦戦していたんです。叫ぶとかは声が低い分、手ごたえがあったんですけど、幼少期の声は監督のほうがかわいかったぐらいで(笑)。

――演じたアンナについては、生見さんはどう受け止めていましたか? もともとは令嬢ですが、特別な“個性”を持つせいで、ダークマイトに連れ去られてしまうというキャラクターでした。

 そうなんですよね。アンナはまるでお姫様みたいな見た目なんですけど、とんでもない個性を持っていて、その個性にすごく苦しめられているキャラクターでした。自分をずっと支えてくれている、執事のジュリオ(※宮野真守演じる)を大切に想っていて、迷いながらも芯が本当に強い印象でした。演じるときも「その芯の強さを大事にしてください」と、監督からは常に言われていました。

 アンナの特徴で言えば、洗脳されてコントロールされるとき、普段とは全然違う声になるんです。幼少期・通常のとき・復活したとき・洗脳されたときと、二面性どころか、四面くらい使い分けをしないといけないので、難しかったですね。

――今の演じるお話で言うと、俳優業の経験が非常に役に立ちそうですよね。

 演じるという部分では確かにそうなんですけど、声優業は……やっぱり別物かも。俳優として演技をするときは、いつも「自然体」を意識して、段取りっぽくならないように気をつけているんです。でも、声優業で自然体を意識してしまうと、強弱が全然表現できなくなるんですよね。現場でも、とにかく「もっとオーバーに演じてください」と言われました。普段とは勝手がまったく違ったので、「こんなにやってわざとらしくないのかな……?」と戸惑いながらもやっていたら、アニメで見るとちょうどよくって。「自然体がいい」という意識を覆されましたし、勉強になりました。

2024.08.01(木)
取材・文=赤山恭子
写真=平松市聖
ヘアメイク=菅長ふみ(Lila)
スタイリスト=伊藤ミカ