この記事の連載

撮影の浦田氏からかけられた言葉とは

――河合さんが出演した『あんのこと』と『PLAN 75』はどちらも社会の片隅で生きる人に焦点を当てた映画であり、撮影の浦田秀穂さん、美術の塩川節子さん、照明の常谷良男さんなどのスタッフも共通していますね。

 はい。でも実は『PLAN 75』では数日間しか現場にいなかったので、スタッフの方とコミュニケーションを取る余裕がそこまでなかったんです。でも『あんのこと』で改めてご一緒して、美術部、撮影部、照明部などのみなさんが本当に丁寧な仕事をしてくださった。素晴らしいなと思う日々でした。

 打ち上げの時に、撮影の浦田さんから嬉しい言葉をいただいたんです。杏を演じるにあたってテストと本番とでお芝居が変わってしまうときがあったのですが、浦田さんが「河合さんが計画したものではなく感じたものを出そうとしているのが分かったから、できるだけ動きを決めずに、毎回最初に出てくる動きを撮ろうとしていた」ということを言ってくださって。

 その言葉を聞いて、本当にチームでこの映画を作ったんだなという実感を得られました。素晴らしいチームでした。

――『PLAN 75』もカンヌ国際映画祭のある視点部門に入選していましたが、河合さんご自身は今回(『ナミビアの砂漠』)での参加が初めてになりますね。何が楽しみですか?

 もう全部楽しみすぎて、毎日頭の中がお花畑みたいです(笑)。海外の映画祭は、出演者として参加するのは初めてなんです。スペインのバスク地方で短編映画の撮影をしたときに、サン・セバスチャン映画祭に行ったことはあって、海も古い町並みもご飯も最高だったのですが、フランスは初めてなんです。自分が出た映画が上映されることはもちろん、世界中の人が同じ映画を楽しむ空気も早く味わいたい。

2024.06.07(金)
文=石津文子
撮影=平松市聖
スタイリスト=杉本学子(WHITNEY)
ヘアメイク=上川タカエ(mod's hair)