イタリアでドイツ語が話される地域があることをご存じでしょうか?

 イタリアの最北に位置するトレンティーノ・アルト・アディジェ州。その中でも北側のアルト・アディジェ地方がまさにその地域です。オーストリアとスイスに国境を接しています。

トレンティーノ・アルト・アディジェ。

 トレンティーノ・アルト・アディジェ州は、北に位置するドイツ語圏のアルト・アディジェ地方と南のトレンティーノ地方(こちらはイタリア語圏)に分かれます。北側には世界遺産ドロミーティ山塊が連なり、州の真ん中を北から南にアディジェ川が流れています。

ドロミーティ山塊。

 アルト・アディジェでは、お店の看板や道路標識、そしてワインのラベルなど、すべてドイツ語、イタリア語併記となっています。アルト・アディジェ地方にある街、ボルツァーノで見かけた看板をご紹介いたします。

ビール専門店。BIRRERIAがイタリア語、BIERSTUBENがドイツ語。
パン屋さん。イタリア語はPANIFICIO、ドイツ語ではBACKEREI。
ワインボトル裏面の説明文もイタリア語とドイツ語。

 日常会話でも主にドイツ語が使われています。ドイツ語とイタリア語、両方が堪能な方が多く、話す相手によって使い分けているそうです。

 では、なぜイタリアに属しているにも関わらず、ドイツ語が広く使われているのでしょうか? それは近代から現代の歴史的な背景が理由です。

 アルト・アディジェ地方は、「南チロル」とも呼ばれます。オーストリア側の「北チロル」と「東チロル」、そしてイタリア側の「南チロル」。これらをまとめてチロルと称し、地域を構成しています。

 チロル地方は中世から近代にかけてハプスブルグ家に支配されており、オーストリア=ハンガリー帝国の一部でした。その後、1810年にイタリア王国へと譲渡されましたが、ナポレオンの没後に再びオーストリア帝国へと復帰。そしてさらに第一次世界大戦後はサンジェルマン条約により南チロルはイタリアに割譲されました。
イタリア語の公用化など様々な同化政策が行われた過去がありますが、現在でも約70%の住民がドイツ語を母語として使用しています。

 このようにドイツやオーストリアの影響を色濃く反映させているアルト・アディジェ地方。言語だけでなく、住民の性格や働き方にも大きく関わっており、伝統を重視し、勤勉な人が多い印象です。

アルト・アディジェ地方(Alto Adige Wine Consortiumより)

 食文化にもドイツやオーストリアの存在が感じられます。

 燻製した生ハムの一種であるスペック(Speck)はアルト・アディジェの名産で、どこに行っても出てくるほど生活に定着しています。ベーコン、ハム、たまごなどをまぜたパン団子はクネーデル(Knödel)、これもドイツ語。イタリア語ではカネデルリ(Canederli)も有名です。

ボルツァーノのレストランで出された3種類のクネーデルとスペックをまぶしたザワークラウト。

 ボルツァーノ周辺はリンゴの生産でも有名なエリアです。リンゴはイタリア北部で広く栽培されていますが、特に生産量が多いのがアルト・アディジェです。日本でいうところの青森でしょうか。

収穫間近のリンゴ。
白いリンゴのお花。

 リンゴの生産量が多ければ、当然のことながらリンゴを使ったお料理も有名です。

 ストゥルデル(Strüdel)は、リンゴ、レーズン、松の実、シナモンなどを混ぜ合わせて生地に包んで焼いた伝統菓子です。

左:ボルツァーノのパン屋さんで売られているストゥルデル。右:手前がストゥルデル。ホテルの朝食でも提供されています。

 また、リンゴと並んでワイン用のブドウ栽培も盛んです。アルト・アディジェは、チロルの中では南に位置しており比較的温暖な気候であるため、かつては赤ワインの生産がメインでしたが、近年では安定した高品質白ワインの生産地として名を馳せています。

 生産者協同組合が多い中で、家族経営で高品質な白ワインを生み出しているのが、ワイナリー「エレナ・ヴァルヒ」です。

次女カロリーン、長女ジュリア、エレナ。

 アルト・アディジェを代表する家族経営のワイナリーで、ワイナリー名にもなっているエレナ・ヴァルヒ氏はミラノで建築家として働いていましたが、1980年代当時、すでに長い歴史を持つワイナリーであったヴァルヒ・ファミリーに嫁いだ時から、彼女のワイン人生が始まりました。

 ワイン造り、自然、人、そしてワインそのものに恋に落ちた彼女は、自らがワインメーカーへと転身し、高品質ワインを造ることを決めました。現在は娘のジュリアとカロリーンが中心となってワイナリーを運営しています。

 カルダーロ村の「カステル・リングバーグ」、トラミン村の「カステラーツ」という、2つの歴史的に有名な単一畑にフォーカスをしながら、エレナは、その秀逸なテロワールを捉え、アルト・アディジェ・ワインの品質スタンダードを新しいレベルへと向上させました。

単一畑「カステル・リングバーグ」とカルダーロ湖。
傾斜が大きいカステラ―ツの畑。
ワイナリーに併設されているガーデンビストロにて。エレナ氏とジュリア氏。

 写真にもある2人が飲んでいるワイン「EWA(エヴァ)」は、アルト・アディジェを代表するブドウ品種、ゲヴュルツトラミネール、ミュラー・トゥルガウ、シャルドネの3種をブレンドした白ワインです。

 バラの花やスパイシーなハーブなど際立った香りを放ちます。ブレンドの特徴であるフレッシュで若々しく軽やかな味わいと、エレガントでジューシーな骨格が共存しています。

EWA。

 素晴らしい香りを持つEWA。一度飲んでいただければ、このワインの素晴らしさをすぐに理解できるはずです。食前酒としてもおすすめですが、白身のお肉料理やエスニック料理とのペアリングもおすすめです。

 このワインの名前であるEWA(エヴァ)はワイナリー名である「Elena Walch」に由来しています。ラベルデザインも美しく、飲み終わった後にインテリアとして飾るのもおすすめです。建築家であったエレナ氏の美意識が細部まで行き届いていることが分かりますね。

 日本からはなかなか訪れる機会の少ない北イタリア、アルト・アディジェ地方。イタリアでありながらも独自の個性を放つ地域で造られる高品質ワインに今後もますます目が離せません。

●日欧商事株式会社

https://www.jetlc.co.jp/

●高品質なイタリア食材とワインのオンラインショップ “ITALIAKARA”

https://italiakara.myshopify.com/

概要

応募期間 2024年6月28日(金)~2024年7月28日(日)23:59
賞品 キュヴェ・エレナ・ヴァルヒ “エヴァ” 750mL 4,500円。
当選人数 2名様
応募方法 下のボタンより応募フォームにお進みいただき、必要事項をご記入の上、ご応募ください。
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