嵯峨野になくてはならない広沢池(ひろさわのいけ)は古来観月の勝地で、有名な芭蕉の句「名月や池をめぐりて夜もすがら」はここで詠まれたものだといわれ、その句碑が立っています。
平安時代の中期に作られた人造池(溜池)で、南に移転した遍照寺の建立にあわせ庭池として造られたとか、渡来人の秦氏が用水として築造したなどと言われています。この一帯は時代劇のロケ地としても良く使われるので、どこかで見たような気がするかも知れません。
広沢池の写真と言えば北にある三角錐の遍照寺山と北東にある茅葺の家を入れたものが代表的ですが、他にもさまざまなポイントがあります。桜は南の道路沿いと東の歩道沿いが並木になっていますが、西側に飛び出した観音島あたりは護岸工事がなくて芦原や小さな潟などがあり、池辺に桜が少しだけ点在しているので、よい写真が撮れます。
ところで広沢池は鯉の養殖池でもあるので、魚釣りはご法度です。運が良ければ養魚用の和船が浮いていることがあり、これまた風情のある写真が撮れるでしょう。ちなみに、12月には池の水を抜いて鯉を水揚げするのがひとつの風物詩となっています。
池の南東に「池の茶屋」というお食事処があり、庭に見事な枝垂桜の巨木があります。鳥が運んできた種から育ったそうです。広沢池の西には大沢池があり、池一周に桜が植えられています。池の北には大覚寺の心経宝塔があり、対岸から撮影すると美しいです。
広沢池のすぐ東に、桜守として有名な佐野藤右衛門邸でもある植藤造園があります。開花の時期は庭園が無料開放されていて、種々の桜が見られます。夜は篝火に浮かび上がる桜が美しいです。目立った看板は見当たりませんが、すぐに見つかります。
平安神宮へのアクセス
交通手段 市バス5系統他「京都会館・美術館前」下車。地下鉄東西線「東山」駅下車徒歩10分。京阪電鉄「三条」「神宮丸太町」駅下車徒歩15分。
小林禎弘
フォトグラファー。京都市生まれの京都市育ち。同志社大学を卒業後3年間の公務員を経て撮影の世界へ。雑誌、書籍、広告を舞台として、京都を中心に西日本を幅広くカバー。「撮影歴30年ですが、それくらいでは京都の事はまだまだわかりまへん」。
2014.03.14(金)
文・撮影=小林禎弘