看護師・アヤと不動産会社で働く・シュウ、そして猫のミケの暮らしを描く料理漫画『にゃーの恩返し』(文藝春秋)。普通とちょっと違うのは、2人の恋のキューピッドが猫のミケだということ。ミケは週に1回2人の仲を取り持つために、猫肌(ひとはだ)脱いで温かな料理を作ってくれます。
著者の山崎紗也夏さんにミケのモデルとなった保護猫「ばる」の存在や、漫画を描き続けて感じる気持ちの変化を伺います。
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ミケのモデル・保護猫「ばる」が家へ来た日
――『にゃーの恩返し』に登場する猫のミケは、山崎さんの飼い猫「ばる」ちゃんがモデルだそうですね。どういう経緯で家へ来たんですか?
山崎 私は昔から猫が飼いたかったんですけど、パートナーで漫画家の和泉晴紀が「コレクションしているレコードをひっかくから」と嫌がったのでやめていたんです。でもコロナ禍をきっかけに仕事場を引き払って、少し広い家に引っ越したから、猫が1匹いてもいいじゃないか、と思ったんですよね。それで彼に保護猫の譲渡会へ一緒に行ってもらって、猫を選んでもらうことにしました。「自分で決めたなら、気に入るだろう」と思って。
彼が選んだ猫は譲渡会で一番ハンサムな猫で、引き取り希望者が多くて倍率は10倍でした。その猫がばるなんです。主催者が飼う人を選ぶ形式で、幸いなことに職業が漫画家で在宅時間が長いからか我が家に来ることに決まりました。当時、生後3カ月くらいでしたね。
――普段はどんな風にばるちゃんと過ごしているんですか?
山崎 仕事部屋に「撫でてくれ」とよく来るんですよ。足元まで来てくれれば撫でられるのに、私が気付くとわざと2メートルくらい先まで走って床にドーンと寝そべるんです。まるで「ここで撫でろ」と言わんばかりに。
――可愛いですね!
山崎 やっぱり、猫がいると笑顔が増えるのでいいですね。夫と喧嘩していても、それぞれが猫に話しかけていたら、いつのまにかお互いに笑い合っているんです。雰囲気が明るくなりました。
――素敵ですね。山崎さんは、過去に猫を飼ったことはあるんですか?
山崎 幼い頃は犬や猫を飼っていました。田舎だったので、野良猫なのか家猫なのか、わからないような状態でしたけど。当時の猫は、家でご飯を食べたら出て行って、ノミをいっぱいつけて帰ってきていましたね。
大人になってからはメダカやハムスターを飼いました。自分で猫を飼うのはばるが初めてです。ばるはよく食べて動く猫で、ちょっとやせ形なんです。だから漫画に出てくるミケもやせ型で、香箱座りなんかはあまりしないんですよね。
2024.05.25(土)
文=ゆきどっぐ
撮影=深野未季