マイホームに執着する中国人たち

 もともと、中国人は土地に対して特別な思いを持っている。

 少し前のことだが、ある中国人女性が沖縄の無人島を買ったと報道され、日本中が大騒ぎになった。この女性が中国政府のスパイで、無人島が中国人民解放軍の軍事基地にされてしまうのではないかと心配した人もいたようだった。また、以前から一部の評論家が、外国人による日本の土地や不動産の購入を規制すべきとテレビなどで主張しており、この議論にも火が付くこととなった。

 無人島を買った中国人女性については今のところ、中国政府のスパイである証拠は出てきていない。本人もここまでの騒ぎになって驚いたはずだ。

 この一件は、土地に対する日本人と中国人の認識の違いがよく表れている。実は中国人は地球上に自分の土地を持つことに、日本人が想像する以上に感動を覚えるものなのだ。自分の土地とは、誰にも侵害されない私有財産を意味する。日本ではごく当たり前のことだが、中国ではそれが許されない。土地はすべて国のものであるからだ。マイホームを買っても土地の所有権がないので、道路を敷くなどの必要が出てきたら、政府が強制的に民家を取り壊すことができる。自分の財産が法的に守られていないため、最低限の安心すら得られない。だからこそ中国人富裕層は海外に移住して、まずはマイホームを買いたいと考える。多くの中国人は土地の権利書(登記簿謄本)を手に入れた瞬間、なんともいえない感動を覚えるという。

 中国ではかつて、農民にとっての土地(農地)は自分のルーツであるとよくいわれていた。だが、土地の所有を禁じる社会主義体制の今は、都市部の住民も地方の農民も、自分の土地を所有することができない。今の中国人は自分が浮草のような存在と感じているだろう。

 さらに、コロナ禍で中国は無法地帯と化した。中国政府は2020年から3年間にわたり、厳しい隔離措置を軸とするゼロコロナ政策を実施。一部の地域では白い防護服を着た役人とみられる連中が勝手に民家に侵入し、ベッドの上にまで消毒液を撒き、犬や猫などのペットを殺処分した。中国の民法で保障されている最低限の私有財産権が侵害されただけでなく、憲法で保障されている人権もとことんまで踏みにじられた。中国では「正しいこと」をするためなら、法的根拠など必要がないという風潮がある。ここでいう「正しいこと」とは、政府共産党による指示である。

2024.05.21(火)