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 それにしても、女性を評価するための語彙がなんと豊富なことか。女性の話し方や愛し方、ひいては生き方そのものまでが評価の対象になっている。さらに、日本における結婚の現実、“婚活”“恋活”サービスがいかに儲かるビジネスであるかも知った。良い妻になるための学校もある。また、離婚と浮気調査専門の探偵事務所もある。不倫の証拠を捏造してくれることもあるらしい。

 そして、日本人のセックスライフと独創性に富む風俗ビジネス。日本では、“無料案内所”という看板が堂々と街中に掲げられ、訪れる人々に風俗店を紹介する。知る人ぞ知る地下ネットワークでは、想像を超えた官能の世界が繰りひろげられているという……。

©Aflo
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「犬顔」に「タヌキ顔」? マッチングアプリの謎の“暗号”

 ティンダーのプロフィールを見るたびに、日本という社会への新しい扉が1つずつ開かれるようだった。プロフィールはどれも短いものだが、それでも、登録者がどのように自らを描き、また、相手に何を求めているかがうかがえる。

「犬顔」もしくは「タヌキ顔」の女性を求める男たちは、自らを「塩額」「ソース顔」、あるいは「しょうゆ顔」だと称している。または、元号を使う男性もいる。「昭和顧」「平成顔」というように。

「S」と「M」は性的晴好ではなく、性格について使われる。男性は身長、体重、体型まで公表している。ちなみに、体型は「ゴリラ」「マッチョ」「細マッチェ」の3つに分類される。そして、忘れてはいけないのが血液型。ある人々にとって血液型は絶対外せない最重要アイテムだ。

 また、自分のパーソナリティーや相手に求めるものが暗号化されて表現されていることがある。「X1」とあったら、離婚経験者(ただし、1回だけ)。「P活」となっていたら、経済的支援をするかわりに若い女性との関係を求めているオジサンたちのことを指す。

 わたしは他のマッチングアプリを使っている友人たちと定期的に情報交換をするようになった。ティンダーは登録者が多いので、感じのいい男の子に出会うチャンスが多い。中には真剣に交際相手(彼らの条件に合った女子)を探している男子もいる。Bumble(バンブル)は外国人男性と外国語を話す日本人男性の登録が多い。

 Pairs(ペアーズ)は日本のアプリで、真面目な恋活アプリと見なされている。Omiai(オミアイ)はその名のとおり、結婚を目指した婚活アプリ。ベアーズとオミアイでは年齢や居住地だけでなく、年収や子どもが欲しいか、結婚したいか、その場合はいつしたいか、という条件でプロフィールを検索することができる。

 というわけで、どのアプリを使っているか言ってみたまえ。あなたが何者か当ててみせよう……!

東京クラッシュ 男は星の数ほどいるけれど

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2024.05.03(金)
文=ヴァネッサ・モンタルバーノ
訳=池畑奈央子