コロナ禍を経て、台北のホテル事情も大きく変わりました。新たな選択肢が次々と増えているなか、ひときわ注目を集めているのは「HOTEL MVSA (ホテル・ムーサ)」。

 2020年10月にオープンした全38室のブティックホテルで、世界の著名ワイナリーと提携していることや、ミシュランシェフによる朝食が味わえることで知られています。次なる台北旅行に向け、気になる個性派ホテルをチェックしてみましょう。


スペインのミシュランレストランの分店を併設

 ビジネス街として知られるMRT松江南京駅に近い「ホテル・ムーサ」。高架道路のそばにあり、一見、高級マンションのようにも見えますが、実はここ、スペインのミシュラン二つ星レストラン「Molino de Urdániz(モリノ・デ・ウルダニス)」を併設したホテルです(海外では唯一の分店です)。

 数々の一流ホテルで働いてきた台湾人オーナーが「Molino de Urdániz」に惚れ込み、契約を交わしたのは2012年。その後、9年の歳月をかけてホテルを完成させたと言います。そこには「世界の美食、美酒、アートを届けたい」というオーナーの並々ならぬ情熱とこだわりが伺えます。

 館内にはオーナーのコレクションである絵画がそこかしこに飾られており、ロビーではバルセロナに暮らすオランダ人の画家の友人から贈られたという闘牛士の絵が目を引きます。

 そのほか、「Molino de Urdániz」の本店から贈られたという2012年の闘牛祭りのポスターは双方の縁が繋がった年を記念したものです。

ワイナリーの名前を冠した客室で部屋飲みも

 このホテルの特色の一つになっているのは、世界の6つのワイナリーや日本酒の酒造と提携していること。各フロアにはそれぞれの名前が付けられています。

 また、「Wine O’clock」というハッピーアワーには、各階のエレベーターホールに設けられたカウンターでフロア名と同じワイナリーや酒造のお酒が楽しめます。

 天才醸造家が手がけるナパヴァレーの「Kanpai Winery」やドイツ最大のワイナリー「Peter Merters」、スペインで最高ランクのスパークリングワインとして知られる「Gramona」、チリの国宴で指定されている「Vina  Garcés Silvea」など、錚々たる銘柄が揃い、ワイン好きの間でも評判となっています。

 また、唯一提供されている日本酒は、茨城県にある田中酒造の「君萬代」。こちらは明治天皇より下賜されたという由緒ある銘柄です。

 宿泊者は部屋からグラスを持ってきて、自由に注いで楽しむというスタイル。カウンターで飲むのもよし、または部屋でまったりと飲むのもよし。夕食前にホッと一息つくことができます。

 さらにもっとお酒を楽しみたいという方には、最上階にある「Lounge Vino」というバーへ。

 ここには台湾の茶葉やフルーツを用いたオリジナルカクテルが揃っています。なかには台湾の朝食店で供される甘いハムサンドイッチをイメージしたという変わり種もあり、豊かな発想力に驚かされます。屋外スペースで夜景を眺めながら、旅の疲れを癒やしましょう。

2024.03.29(金)
文=片倉真理
撮影=榎本麻美