――映画の内容に関してはゼロベースだったのですか?
山崎 具体的な話になる前に「僕がやるならこうだと思う」とプロットを書いて出しました。先手必勝です(笑)。
――ゴジラのデザインは山崎監督と「ゴジラ・ザ・ライド」にも参加された田口工亮さんですね。ベースの造形はライドですか?
山崎 最初はライドと変えようと、自分で絵を描いて、3D造形ソフトで作ってテストもしましたが、最終的に「ライドゴジラだね」と(笑)。もともと理想のゴジラを目指してライドゴジラを作ったこともあり、あのデザインに戻っていきました。ただし、背びれを狂暴にしたり、ディテールを上げたりと修正はしています。またライドは上から見る画が多かったので、頭部を小さくしましたが、今回は人の目線で見上げる画が多いので逆に少し頭を大きくしています。見上げた時にカッコよく決まるバランスで調整した感じです。田口君はこれまで何度も組んできたし、学生時代の先輩である竹谷隆之さんの『シン・ゴジラ』に対抗できるゴジラを作れるのは彼しかいないということです。
触れられるくらい近いゴジラ、対峙する人間の思い
――山崎監督が特にこだわったゴジラの見せ場は?
山崎 いくつかありますがやっぱり街を破壊するシーンですね。ゴジラが目の前まで迫ってくる悪夢のようなイメージをずっと思い描いてきたので、触れられるくらい近い位置からゴジラや壊れるビルを描きました。自分の中では、やっとたどり着いたなという思いです。昭和の街並みは『三丁目の夕日』シリーズや『海賊とよばれた男』(16年)のスタッフが作っているので、当時の資料をかなり細かく調べて再現してくれました。
――今作のドラマ部分の見どころをお聞かせください。
山崎 ゴジラに対峙する人間たちが、どんな思いで行動するかにフォーカスしました。怪獣映画では人間とゴジラが少し乖離する場合があります。あまりにサイズが大きいので怪獣は怪獣たちで戦い、人間はそれを見ているだけでうまく絡めていないという。戦後という時代なら、もっと人間たちをゴジラに絡められるんじゃないかと思って。だから、両者をどう接着するかに腐心しました。僕の映画は群像劇の中で主人公の話が際立っていく構造が多いので、今回もそれに近い物語になっていると思います。
2024.01.31(水)
文=神武団四郎