【KEY WORD:自転車】

 東京では最近、カッコいいロードレーサーやクロスバイクに乗って街を走る人が増えてきました。「若者のクルマ離れ」などと言われている中、経済的で身体づくりにもなる自転車がブームになっているのは良いことですね。

 最近はなんと日本のママチャリが欧米でも注目され、ロンドンにはママチャリ販売店も登場したとか。チャイルドシートやかごがついていて、パンツの裾が汚れないチェーンガードや泥よけなどもある利便性が人気を呼んでいるようです。実際、ママチャリって変速機がないけれどもギヤ比が絶妙で、ちょっとした坂なら女性でも立ちこぎせずに登れてしまいます。こういう使い勝手の良さは本格的な自転車にはないところだと思います。

 とはいえ日本では自転車のインフラやマナーがまだまだ発展途上で、もっと自転車の乗りやすい街にしていかなければなりません。

2020年の東京オリンピックに間に合うか?

 昨年12月には道交法が改正され、自転車が道路右側の路側帯を通行することが禁止されました。それだけ聞くと「いったい何のこと?」とわかりにくいのですが、これまで自転車は道路の右側通行については禁止されていたのですが、白線の外側の「路側帯」というゾーンでは左右どちらを走ってもいいってことになっていたんですね。このため自転車は右でも左でも自由に走っていいという野放し状態になっていたわけです。しかし自転車の右側通行は本当はものすごく危険で、交差点でクルマとの出会い頭の事故を誘発しやすいという問題があるのです。それで今回、ようやく道路も路側帯も全面的に右側通行が禁止されることになったということなんです。

 そして、自転車がどこを走るのかということもきちんとしていません。道交法では「自転車は車道」と決められていますが、遅いママチャリが歩道を走ることも容認されています。しかし歩行者との接触事故の危険性があり、また交差点で自転車が歩道から車道に出る瞬間にクルマと衝突しやすいという問題もある。本来は自転車専用道路をもっと整備すべきなのですが、東京も含めて日本の街にはほとんどありません。たまに設置してあっても、クルマが勝手に駐車場所にしてしまって、中で営業マンが昼寝したりして……。自転車専用道路は駐停車禁止であるということを徹底しないと、いくら道路を作っても意味がないですよね。

 さらに駅前や繁華街の駐輪場が少なく、自転車をとめる場所がないという問題など、東京の自転車事情は本当にまだこれからという状況です。2020年の東京オリンピックのころまでには、もっと自転車が走りやすい街になって世界中の人たちに見てほしいものですね。

佐々木俊尚(ささき としなお)
1961年兵庫県生まれ。毎日新聞社、アスキーを経て、フリージャーナリストとして活躍。公式サイトでメールマガジン配信中。著書に『本当に使えるウェブサイトのすごい仕組み』
公式サイト http://www.pressa.jp/

Column

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2014.02.07(金)
佐々木俊尚=文