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日本人と思われる人はほとんど見かけなかった

 すると自動ゲートの少し手前で、スタッフが看板を持っているのに気づきました(6月13日[火]に再訪した際は気づかず通りすぎてしまい、戻る羽目になったので要注意です)。そこで列が分かれていて、列の先(成都基地の入口付近)に「有」「身分証原件入口」と掲示されているのが遠目にわかりました。「有」は「有人」、つまり人がチェックすることだと推測し、人をかきわけながらその列へ向かいました。

 入口付近に近づくと、「身分証原件入口」の掲示の下に「Entry without an original ID card」と小さく書かれているのが読めたので、この列で大丈夫だと確信できました。入口付近ではスタッフが一人ずつチェックしています。筆者の番になり、旅行会社から伝えられていた予約番号を見せようとしたら、「パスポートを見せて」と言われました。パスポートを差し出すと、スタッフはパスポート番号を手元の機械に入力。照合できたようで、すんなり通してくれました。

 自動ゲートを通れなくても、予約していて早くから並べば、早く入場できることが分かったので、6月13日(火)に予約して再訪した際は、午前6時台から南大門の前に並びました。

 帰り際、外国人がウィーチャットペイを使わずに入場券を購入する方法について、成都基地内の案内所のスタッフに尋ねたら「旅行会社に依頼するしかありません」とのこと。ただ、「開園後でよければ現金で買えますよ」と教えてくれました。

 ウィーチャットペイの運営会社は7月20日、アリペイの運営会社は7月21日、中国国外で発行されたクレジットカード(ウィーチャットペイはVISAやJCBなど5種類、アリペイは4種類)に対応したと発表しました。そのため、外国人旅行者もスマホ決済を利用しやすくなっています。

日本やフランスからもパンダ

 コロナ禍前は、成都基地でも成都中心部の繁華街でも日本人によく遭遇しました。でも今回の旅では、日本人と思われる人をほとんど見かけませんでした。成都基地の観客の大半は中国人と見られます。

 考えられる理由の一つは、ビザが必要になったこと。日本人の場合、従来は15日以内の滞在ならビザが免除されていましたが、コロナ禍の2020年3月にこの措置は停止されました。観光ビザも発給されなくなり、観光目的での入国はできなくなりました。

 その後、中国の「ゼロコロナ」政策が終了して、2023年1月8日(日)から中国到着後のPCR検査と集中隔離が不要になりました。3月15日(水)からは観光ビザの申請が可能になったので、日本人観光客も久しぶりに中国へ行けるようになりました。

 ただ、15日以内のビザ免除措置は停止されたままです。中国の観光ビザの取得には、手間と時間とお金がかかります。さらに、日本と成都を結ぶ直行便の運航は、コロナ禍前と比べ激減しているため、渡航のハードルはまだ高いと言えます。

 その一方で、成都基地にはアドベンチャーワールドから3頭のパンダが2023年2月22日にやってきました。オスの永明(えいめい)と、永明の娘で双子の桜浜(おうひん)・桃浜(とうひん)です。永明は1992年9月14日に北京動物園で生まれ、成都基地へ移動し、1994年9月に日本へ渡りました。桜浜と桃浜は2014年12月2日にアドベンチャーワールドで誕生しました。

 桃浜は成都基地で公開が始まっていたので、筆者は会いに行きました。場所は新エリア。前回、成都基地を訪ねた2019年11月時点では新エリアがオープンしていなかったので、行くのは今回が初めてです。

 6月11日(日)に和花のいるエリアから新エリアまで歩いたところ、遠くて坂道もあったので、6月13日(火)は和花を観覧後、カートのチケットを買いました。園内の主な道はカートが走っていて、新エリアもカートで行けるのです。運賃は30元(約600円)。見たところ、現金で支払っているのは筆者だけでした。

 新エリアに到着すると、桃浜がいるパンダ舎へ向かいました。しかし桃浜はおらず、ネームプレートもありません。念のため、周辺のパンダ舎も見て回りましたが、同様です。スタッフに尋ねると、この日は非公開とのことでした。後日、桜浜の公開も始まりました。

 さらに7月25日(火)には、フランスのボーバル動物園からオスのユエンモン(圓夢)がやって来ました。8月4日(金)で6歳になったユエンモンは、フランスで初めて生まれたパンダで、とても人気があります。

 日本人にとっては、まだコロナ禍前と同じように成都を旅行することはできませんが、和花たちの人気に加え、中国国外からも人気者のパンダたちが来るとなれば、中国のパンダブームはまだまだ続きそうです。

中川 美帆 (なかがわ みほ)

パンダジャーナリスト。早稲田大学教育学部卒。毎日新聞出版「週刊エコノミスト」などの記者を経て、ジャイアントパンダに関わる各分野の専門家に取材している。訪れたパンダの飼育地は、日本(4カ所)、中国本土(11カ所)、香港、マカオ、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、カナダ(2カ所)、アメリカ(4カ所)、メキシコ、ベルギー、スペイン、オーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア。近著に『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)がある。
@nakagawamihoo

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2023.08.24(木)
文・撮影=中川美帆