普通の家庭で暮らす家族が突然、いじめの当事者になったら――。加害者の親である赤木加奈子と、被害者の親である馬場千春は、子どものいじめ問題に向き合う過程で豹変していく。特に、娘の愛がいじめの加害者であると知ったときの加奈子の激変ぶりは衝撃的だ。

「加奈子が娘を怒鳴るシーンには、『親としてそれは言っちゃいけない』『あの対応は間違っている』みたいな批判的なコメントがありました。あと、被害者の親である千春が、学校に行けない娘に八つ当たりをするシーンも同様です」(同前)

あえて親たちの失敗を見せ「読者が自ら考えたり、議論する機会になれば」

 作中では、あえて2人の母親の“酷い対応”を描いているという。それはなぜか。

「いじめがあったときに、親はこういう対応をしましょう、みたいな見せ方にはしたくなくて。というのも、いじめって色々なケースがあるから、正しい対処法が分からないですよね。

 だからこそ、作中の親たちの失敗を見せることを意識しました。それぞれの家庭で親が誤った対応をするたびに『登場人物は間違っている』『自分だったらこうする』という思いを読者に抱いてもらいたかった。そうすることで、読者が自ら考えたり、議論する機会になればいいなと思いました」(同前)

 その狙い通り、本作は親世代からさまざまな反響を呼んだ。ウェブ連載時から、読者がコメント欄で登場人物の過ちを非難したり、正しい対処法を主張したりして、議論が巻き起こるようになった。そして最後まで読み進めると、読者が自らのコメントに“重み”を感じるような結末が用意されている。

「これは少しネタバレになりますが、当事者ではない第三者が好き勝手にコメントすることがどれだけ怖くて重い行為なのか、この漫画を最後まで読んでいただいた方には伝わると思います。実際、全部読んだ読者からは『考えさせられる』という声が多かったです」(同前)

2023.07.01(土)
文=「文春オンライン」編集部