自分で自分の身を守らなくてはいけない

 これから声優を目指そうと思われている方にとっては、あまり聞きたくない話だったかもしれません。ただ今後運悪く不平等な状況に出くわすかもしれない。理不尽で怒りが込み上げ、嫌悪感を抱くことがあるかもしれない。セクハラ・パワハラからは自分で自分の身を守らなくてはいけない。何か一人で解決できないときは、誰かに相談して吐き出してください。そして数年後には、芸の肥やしにしちゃいましょう。

 少し前向きなことを付け加えると、ただ贔屓などでチャンスをもらっても、やがて必ず淘汰されていくものです。

 最後にはしっかりと実力を身につけてきた人だけが残ります。

 では、混沌としたどんぐりの背比べのような中で、一歩抜け出す力を身につけるにはどうすればいいのか。

 未来の自分を具体的にイメージして、1ミリずつでもいいから進み続けるしかないです。スポーツ界のように目に見えて順位がつくことがない芸事の世界です。自分にたくさん栄養を与えて訓練して、チャンスが来たときのために準備しておくしかないです。期限を決めて自分を試してみる、そういった人もいました。私なんかよりも断然輝いていた同期はスッキリキッパリ就職しました。それぞれ自分が選んだ人生を歩んでいき、そのどれもが尊敬できます。

 

劇団を通して続けた「芝居の鍛錬」

 私は勝田声優学院を出てから有志と劇団を創立して、芝居の鍛錬を続けました。声優の仕事をしながら、劇団で10年間活動しました。お客さんの前にさらされることは、とても恐ろしかったけど、チケット代を頂戴するということの重さを知りました。

 そして劇団仲間は、養成所よりもグッと踏み込み合えるという意味で、とても力強い存在。たとえば仲間の芝居を見ることで、自分に今、何が足りていないのかを客観視することができます。逆に、自分の芝居がどう見えているのか、外からの視点で教えてもらえたりする。それに、同期ってウソをつくことなくお芝居の良し悪しも好き嫌いもはっきり言うし、本当にありがたい存在です。

2023.06.29(木)
文=三石琴乃