理由2 シニア向け尿もれケアとの差別化

 理由1にもつながる話だが、以前は尿もれケアのCMに出演していたのは60代以降の女優や著名人で、シニア向け、さらに介護用という視点のものが多かった。ブランド名で言えば、花王の「リリーフ」、ユニ・チャームの「ライフリー」、大王製紙エリエールの「アテント」などだ。

 しかし、前述のように2017年に「チャームナップ 吸水さらフィ」のCMに女優の小池栄子さんが登場、2021年には花王「ロリエ さらピュア 超薄ランジェリーライナー」のCMにモデルの前田典子さんが白いパンツ姿で颯爽と登場するなどして、尿もれはシニア特有のものではなく、世代を問わない悩みであることが徐々に浸透していった。

 同時に、20〜50代をターゲットにした吸水パッドは、パッケージの見た目も大きくリニューアル。生理用ナプキンと同じような感覚で手に取れるデザインのものが増え、購買へのハードルがぐっと低くなったと考えられる。

理由3 生理用ナプキンブランドが手がける親近感

 10代前半の初潮から閉経する50歳前後まで、およそ40年の長きにわたって付き合うことになる、生理用ナプキン。たとえば、保護者が買ってくれるのではなく自分で購入するようになるタイミングなど、人生の大きな転換期でしかナプキンのブランドを変えない人が多く、長らく付き合ってきたお気に入りのブランドへの信頼感は絶大だ。

 たとえば、花王の「ロリエ」、ユニ・チャームの「ソフィ」、P&Gの「ウィスパー」……。だからこそ、これらの愛用ブランドが手がける吸水パッドなら最初から親近感を持てるし、売り場でも手に取りやすくなるということ。

生理用ナプキンで代用するより、尿もれには尿もれ用を!

 以上が大きな3つの理由だが、もちろん背景には、少子高齢化に備えた企業の戦略といった側面もある。当然ながら、少子化が進めば生理用ナプキンを使う人の数は減り、反対に高齢化によって吸水パッドの需要は増える。

 生理用ナプキンから吸水パッドへ、切れ目なく、かつ、抵抗感なく使い続けてもらうために若い世代へのアピールはメーカーにとっての急務でもあるのだ。

 一方で、吸水パッドが買いやすくなるのは、ユーザー側にもメリットはある。尿もれに悩む人の中には、吸水パッドの代用として生理用ナプキンを使う人が少なからずいるのだが、生理用ナプキンはあくまでも経血の吸収に最適化されているため尿のような水分を完全に吸い取るには不向きで、肌にふれる表面が湿ってしまう。これに対し、吸水パッドは水分を素早く吸収して表面はサラサラな状態をキープできる上、消臭機能も備えている。

 餅は餅屋で、目的に合うものを使うことがいちばん。尿もれに特化した製品がこれだけ手に取りやすくなっている今、悩んでいるのならば使わなければ逆にもったいないのだ。

Column

私たちの体を守りケアする
フェム・ヘルス研究室

女性の心身の仕組みを理解して、快適に暮らすめための連載。「フェムテック」アイテムの紹介をはじめ、PMS、月経、更年期などの女性のしんどさを和らげて、生活の質を上げる方法を考えます。

2023.04.18(火)
文=今富夕起
撮影=CREA編集部