【音楽編】
この一年をおさらいしながら
映像を中心に音楽を堪能
――クリス・ペプラー(パーソナリティ)

大規模なライブはテレビでじっくり味わいたい

 年末年始は日常の慌ただしさから逃れ、ゆっくりと音楽を楽しむことができる貴重な時間。音楽ビジネスの世界で活躍するクリス・ペプラーさんは、どんな過ごし方をしているのだろう。

「僕はライブにもよく行きますし、音楽番組も観ますよ。年末に映像で一年をおさらいするのもいいですね。たとえばカウントダウン番組はその年の縮図ですし、ライブ番組や、『フジロックフェスティバル』『SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER』など、行けなかったフェスも観たい。あとは、海外のオーディション番組もいいですね。『The Voice』『Xファクター』や『アメリカン・アイドル』など、時間のあるときにまとめて観るのもいいかもしれません」

 インターネットの普及で、さまざまなコンテンツが容易に手に入る時代。音楽もダウンロードで手軽に楽しむことができる現在では、音楽の聴かれ方が以前とは違ってきている、とペプラーさん。

「音楽を聴くのは“ながら”になってきて、家でじっくり聴くということがなくなってきていると思います。CDは売れない時代ですが、一方でフェスの数や動員は増えていたり、映像コンテンツの需要は増えていると思います。CDにもDVDがついていて、音源オンリーではなく、映像でも楽しむというスタイルが定着してきていますね」

 PVやライブ映像も、いまや音楽コンテンツの大きな要素。実際にライブに行けなくても、ライブを大きなスクリーンでリアルタイムに楽しめるパブリックビューイングも人気。またDVDや音楽番組などでライブを疑似体験するのも、楽しみ方のひとつだ。
「ライブ会場でみんなで盛り上がるのもいいし、家でゆっくり楽しむのもいい。小さい会場だったら生がいいけれど、大きな会場でモニターを観るくらいだったら、家のテレビで観たほうがいいでしょう(笑)。『MTV VIDEO MUSIC AWARDS』の中継はカメラの切り替えがものすごく巧い。ギターの手元をバーンと映したりとか、収録して編集したんじゃないかと思うようなスイッチングにびっくりします。会場で臨場感を味わうのも醍醐味ですが、じっくり楽しみたい人は家で観るのもいいと思いますよ」

 また、最近ではインターネットでのストリーミング中継も盛んになってきた。さらに、後日それをコンテンツとして楽しむこともできる。

「今年ロンドンで開催された『iTunes Festival』もそう。高音質、高画質で生中継されて、そのあとにアーカイブ化され、いつでも観られるようになる。Qelloというミュージックサイトでは、昔のアルバムの曲にライブ映像などがついてコンパイルされている。アルバムは持っていても、この映像は観たことがないから観てみよう、そんな楽しみ方も出てきています」

自分なりのクリスマスソングを選ぶのも楽しい

Christopher Daniel Peppler
1957年東京都生まれ。J-WAVEが88年に開局すると同時にナビゲーターとして抜擢され、以降、四半世紀の長きにわたって『TOKIO HOT 100』のDJを務めている。また、テレビやCMへの登場も多数。ビッグセレブの来日記者会見やイベントのMCも手がける。現在出演中の番組は、『OTOAJITO』(J-WAVE)、『洋楽ライブ伝説』(WOWOW)など

 現代の音楽シーンはあまりに細分化し多様化していて、“主流”がなくなってきているというペプラーさん。さらにペプラーさんは、音楽の「アーカイブ化」も現代のシーンを語るうえでのキーワードになっているとみる。

「いまの若い世代の人にとっては、古いも新しいもない。僕らの世代は“これは1960年代の古いものだな”と思うけれど、若い人がインターネットでざっと観たときに、レディー・ガガだろうがジャニス・ジョプリンだろうが並列なんですよね。この前もステップキッズというバンドを観に行ったんですが、彼らはまだ若いんだけれど、サウンドはスティーリー・ダンっぽいところもあり、ライブはグレイトフル・デッドみたいなところもある。本人たちも古い、新しいという概念では作っていないと発言していて、ボーダレス化していると思います」

 こういった状況のなかで来年のことを占うのは難しいが、国内では歌詞がハードな方向に少し揺り戻しがきているのでは、と感じているそう。

「特に3.11以降、日本のポップスは軟弱になっていたように思います。“ひとりじゃ何もできないけど、みんなで集まれば何かできるかもしれない”みたいな。その反動で、少し骨のあるハードなものが出てきた。マキシマム ザ ホルモンはそのいい例ですよね。K-POPが台頭しているのも、彼らはハートが強くて、強いものを応援するというマインドがあります。だからインターナショナルでも通用する。KARAや少女時代もクオリティが高いと思います。そういう強い意志や骨太なものが求められている気はしますね」

 最後に、クリスマスシーズンにおすすめの音楽の楽しみ方を聞いてみた。

「ライブは豊富にやっているので、いろいろ調べてみるといいと思います。教会やお寺でもクオリティの高いフリーライブをやっていたりしますよ。英語で“Christmas spirit”という言葉がありますが、クリスマスの心というのかな、風情にひたるような気持ちで、自分なりのクリスマスソングを選んでみるのもいいかもしれません。マライア・キャリーや山下達郎の定番クリスマスソングもいいけれど、これが僕の、私のクリスマスだという曲をかけてみては。僕はクリス・レアの『Driving Home for Christmas』やジェフ・バックリーの『Hallelujah』などもいいですね。それ素敵ねとか、それおかしいんじゃない? なんて言われたりするのもまたいいかも。ぜひ自分なりの楽しみ方を見つけてみてください」

【このコンテンツがおすすめ!】
『SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2013 DAY1/DAY2』

放送チャンネル:スペースシャワーTV

 スペースシャワーTVが主催する毎年恒例の野外ライブイベントの模様を、計6時間にわたってオンエアする特別番組。2013年は、マキシマム ザ ホルモン、サカナクション、きゃりーぱみゅぱみゅ、電気グルーヴ、flumpoolなどの豪華アーティストが出演。

スタッフ:榎本市子=文 山元茂樹=写真

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2013.11.22(金)