有働 それは分かるなあ。
古沢 織田信長・豊臣秀吉・徳川家康の戦国三英傑が幸せだったとは思えないんです。家康は好んで、あの時代に、弱小国のプリンスとして生まれたわけではない。別に天下を取りたいわけでもなかったと思います。必死に悩み、もがき、半ベソをかきながら、信長や秀吉をはじめとするモンスターたちに食らいつき、命からがら乱世を生き延びていった。そんな誰もが共感しうる現代的なヒーローなのではないかなと。
有働 今は何話目まで書いたところですか。
古沢 半分ちょっと超えたところです。
有働 順調なのでは?
古沢 ちょっと焦っています。どこかですごい修羅場が来て行き詰るのではないかと不安で。思ったより時間がかかっていて、もう少しペースを上げていきたいですね。
有働 一話書くのにどのくらい時間がかかるんですか。
古沢 大体2週間かかります。
有働 何が一番大変ですか。
古沢 まず、勉強しないといけないんですよ。家康は史料が数多く残っていますから。時代考証の先生方に「このとき、この人はここにいません」と、ご指摘を受けたりしながら書いています。
有働 大河ドラマ『真田丸』でナレーションを務めたとき、考証の先生が3人ほどいました。収録直前に先生からの指摘で台本に修正が入って。「むしろ分かりにくくなっちゃうけど、本当に変えるんですか?」と言うと、「どうしてもこの説明じゃないとダメなんです」と。
古沢 台本に入る先生の赤字チェックが恥ずかしいですね。現代でも使う敬語まで間違って余計恥をかいています(笑)。
有働 天下の古沢先生でも赤ペン先生は容赦ないですね(笑)。
古沢 物語上の都合で人物を動かせないときや、時代考証に沿った言い方にして面白さがなくなっちゃうときは、こちらのワガママを通させてもらっています。でも、先生方のご指摘はとても勉強になります。
有働 半分まで書かれてみて50話近い大河は長いと感じますか。
2023.01.29(日)
文=古沢良太、有働由美子