種まで食べるからこそ味わえる素朴な味覚

 このドルチェは、ブドウ農家の農民たちが収穫時期の簡単なおやつとして作ったのが誕生のきっかけ。

 あのトスカーナを代表するワイン「キャンティ」のブレンドに古くから使われてきたカナイオーロという地場品種を使うのがオリジナルのレシピです。収穫したブドウでワインだけではなくドルチェを作ってみよう! とひらめいた昔の農民、ナイス!

 このドルチェ、食感も面白いんです。比較的小粒のブドウを使うのですが、小さな種がジャリジャリとそのまま入っているので、食べるたびに耳元でガリガリと砕ける音が。

 この種が嫌だという人も意外に多く、最近は種無しのブドウを使って作るところも。パン屋さんのショーウィンドウに「種無し!」と大きく書かれた張り紙があったりするんです。

 一方で、スキアッチャータ・コン・ウーヴァはやっぱり種がないとね、とオリジナルのレシピを愛している人も多く「種あり!」と書かれた張り紙もよく目にします。

 収穫時期をドンピシャで迎えた完熟したブドウの甘さと、程よいタンニンを感じるスキアッチャータ・コン・ウーヴァ。フォカッチャの香ばしさも最高にマッチしていて、あぁなんて美味しいドルチェなんだろうと、見かけるとつい何度も食べてしまいます。

 ちなみに私は種無し派から種あり派に。もちろん、今回の滞在でも4、5回は食べています。

 作り方はピザと一緒。

 小麦粉に水や砂糖、オリーブオイルに生イースト(なければドライイースト)を足し、発酵させた生地の上にブドウをたっぷりと乗せオーブンで焼くだけ!

 12月になるとさすがに店頭で見かけることはできないのですが、フィレンツェへの旅行を検討している方、ぜひスキアッチャータ・コン・ウーヴァを食べられる秋に行って欲しい。それくらい、地元の味覚なんです。

 イタリアの秋冬の味覚、まだまだたくさんあるので引き続きご紹介しますね。

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齊藤奈津子(さいとう なつこ)

イタリア料理研究家。TVディレクターとして様々なジャンルのテレビ番組を制作するうちにイタリア料理の素晴らしさに目覚め、2009年、イタリア料理研究家1級を取得し翌年イタリアのフィレンツェへ料理留学。帰国後、イタリア各州の郷土料理を紹介する「イタリア家庭料理教室180℃」を開業。イタリアの食文化、そしてチョコレートを広める活動を続けている。インスタ:@natsukosaito0104

Column

簡単なのに味は抜群! イタリア・マンマの愛情レシピ

郷土料理こそがイタリア料理の真髄! イタリア各地方の郷土料理やマンマの工夫料理を研究している齊藤奈津子さんが、家でも簡単に再現出来る本格イタリア料理のレシピをご紹介します。

2022.12.23(金)
文・写真=齊藤奈津子