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ブレイクの不安を、エレキテル連合は半分こにしているのかも

 信じられないほどのブレイクを果たしながら、スタンスを変えずにやりたいことを続ける芸人もいる。「ダメよ~ダメダメ」でお馴染み、日本エレキテル連合である。「いまだに赤と、タートルネックのセーターは着れないです」というくらい、細貝さんとダッチワイフの朱美ちゃんをテレビでやり続けた二人。劇場では常に悲鳴が上がっていたというネタは、なぜかテレビで大ウケし、エレキテル連合は一躍時の人となった。

 「もともとものすごくテレビっ子で、テレビコントで育って、テレビ大好きなんですけど、やっぱりテレビは見るものなんだな、と思いました。あんまり上手に立ち居振る舞いができなかったから」。拍子抜けするほどあっけらかんとブレイク当時を振り返る。「ただ、よく『テレビに出たくない』って思われがちなんですけど、そんなことは全然ないんです。出てる人たちのことを『ああ、すごいな』と思って見てる。劣等感というか、こうなれなかったな……っていう気持ちで見てます。私たちにはできなかった」。

 これらの言葉にも不思議と鬱々とした感情は読み取れなかった。コンビが同じ方向を見ているというのは、思っているよりずっとコンビに安寧をもたらすのだろう。インタビュー後に二人仲良くおしゃべりしながら阿佐ヶ谷の街に消えていったのがとても印象的だった。モリ夫や青木さやかが抱えていたブレイクの不安を、エレキテル連合は半分こにしているのかもしれないなと思った。

 一発屋芸人とは、テレビの中で選ばれた人である。男性芸人に比べて数が少なく、目立つ存在の女性芸人は、その分選ばれる確率も高い。モリ夫も青木さやかもエレキテル連合も、それぞれのやり方で花火の威力に対抗して、今がある。

女芸人の壁

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文藝春秋
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西澤千央(にしざわ・ちひろ)

1976年、神奈川県生まれ。実家の飲み屋で働きながら、『KING』(講談社)でライターデビュー。現在「文春オンライン」(文藝春秋)や『Quick Japan』(太田出版)、『GINZA』(マガジンハウス)、『中央公論』(中央公論新社)などでインタビューやコラムを執筆。

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2022.11.09(水)
文=西澤千央