おしゃれ実験は「昔の定番服」を活かして

左:大きなボタンが印象的なリネンドレスは、まだ日本にアニエスb.がなかった30年ほど前にパリ本店で購入
右:20代に母が縫ってくれたギンガムチェックのシルクワンピース。身幅や丈を直し、シャツを重ね着したりカーティガンをはおり、いま風に着ています

 定番にしたい服ができたら、あとは着こなしの「工夫」。大事になってくるのは、自分のベストバランスの研究です。

 たとえば、ふんわりシルエットの、ロング丈ワンピース。お腹まわりを品良くカバーしてくれる重宝な一着ですが、布面が広いので、どこかにメリハリをもたせないと、実際以上にふとっちょにみえてしまうんです。何度も着ては姿見に映してみて、襟ぐりや袖まわりのアキが重要だとわかりました。首や手首がある程度みえるデザインだと、バランス良くすっきり。髪も、襟足ぎりぎりのショートボブにしたら、よりメリハリができました。さらに、袖は七分か八分丈の短い丈だと、ほっそりしてみえるうえに、水仕事もしやすいです。そこで、このごろは長袖の服の袖をハサミで切り、端を簡単にまつって、自分好みの七分袖にしています(不要な服で一度やってみて。このお手軽さがわかりますよ)。こんな着心地のよさへの小さなこだわりが「わたしらしいおしゃれ」に繋がるのかな、なんて気がしてます。

石村由起子 (いしむら ゆきこ)
奈良在住。全国からファンが訪れるカフェギャラリー『くるみの木』と、ミシュラン一つ星のホテルレストラン『秋篠の森 「なず菜」』のオーナー。
暮らしを楽しむ祖母の知恵にくるまれて育ち、学生時代には染織を学び、民藝を入口に手仕事に精通。自らのショップで展開する、暮らしの道具のセレクト眼にもファンが多い。さらに近年は、生活プロデュースの視点での商品開発、街おこしプロジェクトなど幅広い分野からオファーが引きもきらない。著書に『私は夢中で夢をみた』(文藝春秋)、『奈良・秋篠の森「なず菜」のおいしい暮らしとレシピ』(集英社)など多数。HP 「くるみの木」 www.kuruminoki.co.jp

Column

石村由起子の暮らしの“ツカミドコロ”

石村由起子さんといえば、人気のクラフト作家や料理家、エッセイストなど生活美学のある人たちが一目おく、暮らし上手です。
祖母から受け継いだ知恵と礼節、愛するモノを捨てずに活かすワザ、「これだけは」と手をかけてきた習慣など、多忙な日々のなかでも心豊かに暮らすために石村さんが「大切にしてきた」視点とアイディアを、CREA WEB読者に指南。年齢をこえて共感できるチャーミングな暮らし術を、プライベートフォトを添えて綴ります。

2013.10.14(月)
text:Reiko Oishi