もうひとつの名物温泉、玄武洞
2つの湯船があり、太平洋が迫る先端の湯船では、ドドーンと迫力の波音。暗がりから眺める熊野灘のブルーは、美しさもひとしおです。鍾乳洞のような岩壁には湧き水がつたい、ワイルドそのもの。水平線から望む朝日や、洋上を照らす月、風光明媚な湯浴みが楽しめます。
ホテル浦島のもうひとつの名物温泉は、玄武洞(げんぶどう)。
玄武洞も豪快な岩肌を露出した、洞窟内の温泉。太平洋の沖にはカツオ島の灯台やいくつかの小島、雄大な海岸線を望み、温泉の気持ち良さが倍増するよう。
ちなみに、忘帰洞から玄武洞までは、2つの館内を通り抜けて、歩いて15分はかかります。スタンプラリーのように湯殿めぐりもありますが、かなりの運動に!?
リアス海岸に守られた天然の良港
那智勝浦といえば、“生まぐろ”の水揚げ量日本一のマグロの町!
実は、近海のまぐろ漁が盛んなのも、南紀勝浦温泉との関わりがあります。
大陸とプレート間で深場から浅場へ一気に立ち上がる地形が形成され、そこで生じるプランクトン豊富な湧水流にまぐろが集まってくるのだとか。
勝浦漁港に水揚げされるのは、100%はえ縄漁。イカやサンマを付けた釣り針を500~2,000個付けて垂らした縄(長さ90~135キロメートル)を仕掛け、マグロがかかるのを待つというスタイル。そして船上で活け〆を行い、新鮮なまま漁港へ運ばれます。これまで水揚げされた最大のマグロは282センチ、約450キロもあったとか。
早朝7時から開かれる、生まぐろのせり(入札方式)を公認ガイドツアー(1名2,000円)で見学することができます。このツアーなら一般では入れない2階の見学デッキから、せりの様子が見下ろせます。
市場には生まぐろがずらり。マイクを通して、まぐろの番号と金額や獲得した仲買人の名前が独特な節回し(?)で伝えられます。仲買人は“てかぎ”という道具を使い、切り落とした尾や裏面をひっかけてチェック、胴体を叩いて弾力を確認したり、目にライトをあてたり、まさにプロの所業。
冷凍まぐろは水っぽく感じてしまうけれど、生まぐろは“もっちり”とした食感と凝縮した旨みが特徴。町内には生まぐろが食べられる食堂や、セルフ販売所もあり、欠かせない郷土食となっています。1月からは脂が乗り、まぐろの美味しい季節です。
2022.01.29(土)
文・撮影=古関千恵子