「バカカッチョいい!」と圧倒された劇団☆新感線

 10代のころは、所属事務所が運営する俳優養成所で芝居を学んだ。2018年に連続テレビ小説「半分、青い。」や「ホリデイラブ」などで注目されるまでは、舞台で実力をつけてきた印象がある。でも、中村さんが実際に生の舞台を観たのは、事務所に所属してからだった。

「事務所の先輩が出演されている舞台を、勉強も兼ねて観に行っていました。一番勉強になったのは、高3の夏(2004年)に、彩の国さいたま芸術劇場で上演された、『お気に召すまま』という作品。

 夏休みだった僕は、事務所の先輩の付き人みたいなことをしていたんです。現場に行くまでの移動中に相手役のセリフを言ったり、稽古の様子をビデオ撮影したり。演出が蜷川(幸雄)さんだったので、ダメ出しを聞くだけでも、ためになることだらけでした」

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 同じ年、通っていた俳優養成所の同期の家で、劇団☆新感線の「髑髏城の七人」(1997年上演)のDVDを観た。“いのうえ歌舞伎シリーズ”と呼ばれ、古田新太さんが主役と敵役の2役に扮したエンターテインメント感満載の冒険活劇。溢れるエネルギーに圧倒され、シンプルに「バカカッチョいい!」と思った。

 そこから12年後、憧れの新感線から、出演のオファーがきた。生田斗真さんが主演する「Vamp Bamboo Burn~ヴァン!バン!バーン!~」。劇中、オリジナルのROCKの楽曲が生バンドで演奏され、歌楽曲が多数ある“Rシリーズ”と呼ばれるジャンルだった。

新作舞台では“妖怪ヒーローショーが繰り広げられる”

 舞台を観慣れていない人からすれば、チケットの取り方、観劇のマナー、何か予備知識をつけていった方がいいのか、などなど、舞台観劇には不安がつきものかもしれない。でも、劇団☆新感線の舞台ほど、頭を空っぽにして楽しめる舞台はそうない。

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 派手でパワフルで、真面目で不真面目。くだらない部分はくだらなく、アツいところはアツく。舞台ならではの娯楽性をとことんまで追求している。そんな新感線の新作で、ついに中村さんが主演を果たす。いのうえ歌舞伎「狐晴明九尾狩」で、陰陽師・安倍晴明を演じるのだ。

「脚本を読んだときは、『妖かしあってこその都』というテーマが、すごく面白いなと。朝廷の人たち、権力者たち、市井の人の他に、半端者とか妖かしのようなよくわからない生命体もバンバン登場する。楽しい妖怪ヒーローショーがそこかしこで繰り広げられます」

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中村倫也(なかむら・ともや)

1986年12月24日生まれ。東京都出身。2005年俳優デビュー。2014年、初主演舞台「ヒストリーボーイズ」で第22回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞。近年の出演作はドラマ「珈琲いかがでしょう」(’21)、「この恋あたためますか」(’20)、映画『ファーストラヴ』(’21)など。

いのうえ歌舞伎「狐晴明九尾狩」

並外れた陰陽道の才能ゆえに「人間と狐の間に生まれた」と噂され狐晴明と呼ばれる安倍晴明(中村倫也)は、妖狐に肉体を乗っ取られた陰陽師宗家の跡取り賀茂利風(向井 理)と対決することになる……。9月17日~10月17日 TBS 赤坂ACTシアター。大阪公演あり。
www.vi-shinkansen.co.jp/kyubi/

2021.09.07(火)
Text=Yoko Kikuchi
Photographs=Satoru Tada
Styling=Arata Kobayashi
Hair & Make-up=Emily

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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