「めちゃイケ」でバカウケした大久保さん

「めちゃイケ」のスタッフが私たちの単独ライブを見て、大久保って面白かったんだ、となり、「めちゃイケ」に隠しゲストで出ることとなりました。バカウケでした。時代の幕開けでした。

 嬉しかったです。眠れる獅子がやっと起きたぜ。この人、うちの学年で一番面白かったんですから。もう一人じゃないんだ。もう怖くなくなる。

 初めは嬉しかったのですが、すぐに辛くなっていきました。何も、思い描いたようには運びませんでした。大久保さんは「OL」という肩書き、扱いなので、スタッフも共演者も、私に要求するものと大久保さんに要求するものが違いました。そして大久保さんはまだ未知の存在で飽きていない。大久保は面白いけど光浦はつまらない、そうなってゆきました。あれ? あれれれ? いや、いや、そういうことじゃなくて。一刻も早く、この空気打破しないと……。私だって、いや、私の方が面白いはずです。私は焦って空回りばかりするようになりました。カラカラカラカラ…………。

 ネットニュースなどに大久保さんが取り上げられるたびに比べられました。そこにはいつも「逆転」という文字が。ウサギとカメのカメが大久保さんなんでしょうか。何が腹たつって、世間の正義は勝つという空気でした。大久保は今までOLで苦労してきたから。テレビに出ないことは苦労なんですかね。ここまでの環境を作るのに、どれだけの苦労をしたことか。

 なぜ世間は比べることが好きなのでしょう。自分の意見だけじゃ心もとないから、差で補強しようとするのでしょうか。大久保すごい、それでいいじゃんね。光浦落ち目、これを加えることで、少しでも問題を大きくしようとする人たちの意地悪さに泣かされました。

 

「仕事のパートナーにはなれませんでした」

 コンビというものは厄介です。どちらかがボケになればどちらかがツッコミになるように、二人で一つになるもので、趣味も好みもキャラクターも、体質ですら自然と住み分けるようになります。片方に唾をつけられたら片方はもう手をつけられなくなります。大久保さんは男好きで、私はお堅くて、大久保さんが下ネタを言えば、私は「ぎゃー」と耳を塞ぐ。いや、別に、コンビ揃って男好きでもいいんですよ。でも自然と同じ熱量で逆の方向へ進んでゆくんです。後輩芸人のツッコミと私が仲が良ければ、ボケは大久保さんと仲がいい。私がすぐ泣くのに、大久保さんは人前で泣かない。私は寒がりで大久保さんは暑がりで、私は汗っかきで、大久保さんは汗をかかない。私はたい焼きの皮が好きで、大久保さんは餡子が好き。お金のない若手の頃は上手に分けて食べていました。

2021.05.31(月)
文=光浦靖子