手作りの伝統が息づいている八重山諸島。もうひとつの沖縄の魅力に出合える幸せ。

石垣島

那覇空港から飛行機で約1時間。羽田、成田、中部、関西、福岡の各空港から直行便あり。約1時間50分~2時間50分。

島の太陽と風に育まれた 手工芸の美しさに心打たれる

◆【石垣島・白保】やちむん館工房 紗夢紗蘿

 南ぬ島石垣空港のほど近く。樹齢数百年というガジュマルが枝を広げ、鬱蒼と草木が茂る白保の森に、古くからの民具作りの伝統を守り続ける場所がある。「やちむん館工房 紗夢紗蘿」だ。

 主宰するのは、池原美智子さん。縁あって民藝の世界に入り、約40年。昔ながらの技法を受け継ぎ、素朴な手作りの品々は、唯一無二の美しさに溢れている。

 民具作りは、まさに1年がかりだ。まずは、材料となる草木を育てるところから始まる。紗夢紗蘿で使用する素材は、基本的に工房の周囲を包む森の恵み。月桃、クバ、アダン、さまざまな木の実……、土地が育む草木を刈り取り、干し、そして糸を綯う。

 さらに、数多の工程を経て、ようやくひとつの作品が完成。“あんつく(網袋)”をはじめとして、そこに凝縮した手仕事の貴重さに思いを馳せれば、民具のひとつひとつが、さらに愛おしくなるだろう。

 なお、趣ある木造の工房には、ギャラリーショップを併設。

 工房で作られた編み籠、箒などのほか、八重山諸島で活躍している作家さんの器などがぎっしりと並び、大きなものでは、月桃で編んだ直径約2メートルの円座(丸いゴザ)も。編み上げるのに数か月はかかるという労作だ。

 石垣島に奇跡のように息づく珠玉のモノ作り。それに触れるのも、この島を旅する贅沢なのだ。

やちむん館工房 紗夢紗蘿

所在地 沖縄県石垣市白保1960-15
電話番号 0980-86-8960
営業時間 10:00~17:00 ※予約制

2021.02.10(水)
Text=Shojiro Yano
Photographs=Atsushi Hashimoto

CREA Due 2021年1月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。