ジュエリー製作における持続可能=サステナブルな方法を模索していたポメラートが、遂に出会った運命の技とは? なんと15世紀から伝わる日本古来の“金継ぎ”という修復工芸。新たな命を吹き込まれ、斬新な美しさを放つ……ポメラートの“金継ぎ”コレクションに注目してみましょう。
通常は廃棄される、割れてしまった宝石を再利用し、新しい美の価値を見出せないだろうか?
そう考えていたポメラートのクリエイティブディレクター、ヴィチェンツォ・カスタルドは、2019年の訪日中に、伝統的な修復技術 “金継ぎ”と運命の出会いを果たします。
カスタルドは語ります。
「 壊れたものが修復工程を通して“より尊くなる”とか、傷つき、癒えることを “強さの証”として祝うという日本古来の考え方は、むしろ現代的で素晴らしい哲学です。また、捨てずに再利用することは、私たちの生活やサステナビリティへの取り組みに深く関連しています」
今やどの業界でも、真摯に向き合い、取り入れるべきは“サステナブル(持続可能)”な視点。ポメラートとて例外ではありません。
しかしカスタルドは、日本の伝統的な再生・修復技術に敬意を払うだけでなく、“傷みを乗り越えてより強くなる”という日本人ならではの精神性にも大いに着目しています。それこそ、ポメラートのジュエリーと日本の金継ぎの“真の融合”を物語っているのではないでしょうか。
“金継ぎ”の歴史の始まりは室町時代。将軍・足利義政が愛用の碗の欠けを直すために中国に送ったところ、修理部分の見栄えの悪さに失望し、日本の職人により良い方法を探らせたことが発端とか。模索の末、漆と金粉で碗を修復する方法が編み出されたと伝えられています。
そして、完璧で真新しい美だけでなく、“不完全な物にさえ尊い命と美が宿る”という、15世紀の将軍が見出したビジョンは脈々と受け継がれ、21世紀のイタリアンジュエラーの心を強く捉えたのです。
こうして誕生した「ポメラート“金継ぎ”コレクション」では、壊れたジェット(黒玉)とカショロン(ホワイトオパールの一種)を“金継ぎ”で再生。
前出のカスタルド曰く「新しい命を吹き込まれたジュエリーは真の意味で一点物であり、これこそが私にとってのプレシャスの真髄です」。さまざまな意味で、インスピレーションに満ちたコレクションであることは間違いありません。
ポメラートブティック銀座店
電話番号 03-3289-1967
https://www.pomellato.com/
2021.01.29(金)
文=関谷麻美