「春菊天そば」の華やかで美しい姿
昨年12月の土曜の昼下がり、久しぶりに「福そば」を訪問した。すると、近隣のお店の女将さんや旦那衆などでごった返していた。ご近所話をしながらお気に入りの天ぷらなどを注文している。
カウンターの中央に天ぷらがたくさん並んでいた。「紅しょうが天」が鮮やかな紅色を放っている。店主は「エリンギ天」、「みょうが天」などをすすめていた。
自分は「春菊天そば」を注文した。するとそばを大釜に入れ茹で始め、天ぷらを用意する。茹で上がると、大きなお玉でつゆをそばの入った器に丁寧に回しかけ、天ぷら・ねぎをのせて完成である。出来上がった「春菊天そば」の美しい姿に感心する。
つゆをひとくち飲んでみる。濃すぎることはなく奥行きのある深い味である。前日夜に昆布を水につけておき、さらに翌日、鰹節や宗田節、サバ節などで出汁をとり、2つを合わせて出汁を完成させる。返しは2週間寝かせたものを使い、つゆはこまめに作っていくという。
天ぷらは薄めの天水に具材をからめて、じっくりと揚げていく。揚げ置きしてもしっかりと衣にカリカリ感があり、つゆに浸すとゆっくりとほぐれていく。
そして天ぷらの旨さが華開く。油切れもよい。そばは生麺都度茹で、コシもあり、とにかくつゆとのバランスがよい。
かき揚げ天、紅しょうが天、春菊天……天ぷら天国
今年も2月に入った平日の午後、「福そば」を再訪した。かき揚げ天、紅しょうが天、たまねぎみつば桜エビ天、春菊天、ごぼう天、しめじ天、まいたけ天、れんこん天、かぼちゃ天などがきれいに並んでいる。
2020.02.26(水)
文・撮影=坂崎仁紀