ブランドイメージは一瞬にして
オセロのようにひっくり返る
まさに人のイメージはオセロゲーム。会社内での一人ひとりのイメージも同じ。様々なコミュニティーでのイメージも同じ。
好転したり転落したり、一瞬にして乱高下を繰り返す。そもそもイメージとはそういうものと思っていれば怖くないが、ただ何かのきっかけで思わぬ方向にイメージが一人歩きしていくことが少なくないことをしっかりと肝に銘じておくべき。
特に結婚離婚、昇進降格、失言暴言には気をつけたい。ここぞという狙いが裏目に出た小泉進次郎のケースを反面教師として。
化粧品の世界でも、同じようにイメージの激変は起こりうる。丁寧で真摯な保湿が身上であると見えていた花王が、ここへきて世界で最も先進的なメーカーに躍り出ようとしているのだ。
ふわっとした風としか感じない超極細繊維を肌に吹き付けて極薄人工皮膚状フィルムを瞬時に作る驚異の先進機器バイオミメシス ヴェールディフューザーを発表。
衝撃をもたらしたうえに、この極薄膜を一晩まとって寝ると、翌朝毛穴の見えない見事な美肌ができあがると訴える。
単にミクロのテクノロジーだけではない、見えない膜で創傷治療効果をもたらす夢の未来美容が始まるのだ。かくして花王は一夜で最強テクノロジーメーカーとなったのだ。
また発色も鮮やかなアーティスト発信のカラーコスメとして時代を築いてきたNARS。しかしある時からベースメイクの美肌ロングラスティング力でにわかに注目を浴び、今、最強ファンデブランドとしての地位を確立している。
コスメ界においてもブランドイメージは、一品にして、一夜にして変わる。イメージはまさに、生き物なのである。
齋藤 薫 (さいとう かおる)
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。女性誌で多数の連載を持つほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『“一生美人”力』(朝日新聞出版)、『されど“男”は愛おしい』(講談社)など、著書多数。
Column
齋藤 薫 “風の時代”の美容学
美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍する、美容ジャーナリスト・齋藤薫が「今月注目する“アイテム”と“ブランド”」。
2019.12.03(火)
文=齋藤 薫
撮影=釜谷洋史