![新発見の「蕪に双鶏図」。若冲の数少ない最初期の着色画。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/5/1/-/img_51cf8c35a6c491b8ed7fe4a142050bd9237910.jpg)
18世紀の江戸中期に京で活躍した天才絵師・伊藤若冲。
この度、若冲の若い頃の作品が新たに発見されました。
縦110センチ、幅68.8センチの手漉き紙に、絵の具と墨を使って、蕪と鶏を描いた着色画の「蕪に双鶏(そうけい)図」。
30代初めから半ば頃の作で、現在知られる若冲作品の中でも最初期のものです。
![作風や印章から制作年代を判定。「若冲」の署名は、後に書き加えられた可能性も。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/1/9/-/img_1923dfae4bfc7bab349798e134dcd71887312.jpg)
日本人が古来、お手本とした中国画には蕪を画題に描いた作品はありますが、蕪と鶏の組み合わせは珍しく、若冲オリジナル。
若冲には、当時は珍しかった舶来種のウチワサボテンと鶏を描いた70代半ばの代表作もあり、唯一無二の組み合わせで作品を構成する独自性は、すでにこの頃から備わっていたようです。
![蕪と鶏の組み合わせは珍しい。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/4/8/-/img_48c7cbf3aff1f6b2faf4a00662e014e7172761.jpg)
初期の絵画学習法として、庭に数十羽の鶏を飼い、数年の間、その姿を観察して写生したというエピソードを持つ若冲ですが、鶏はライフワークともいえる画題で、85歳でなくなるまで、生涯を通して鶏の表現にこだわり続けました。
一方の蕪は、青物問屋の主人だった若冲にとっては身近な存在であり、また野菜は自身の経済力を支える、敬愛すべき対象。
つまり、「鶏」も「蕪」も、若冲にとっては、特別な画題なのです。
![土から少しだけ顔を出す蕪。病葉(わくらば)は後の作品にもよく見られる。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/0/0/-/img_00ef4a5c49cd068f8d4760fb56e54882150082.jpg)
作品を所蔵する福田美術館の学芸課長であり、作品発見者の岡田秀之氏はこう説明する。
「特に、頭から首にかけて、羽を細かく丁寧に表現しています。蕪の葉や下草の描写には不慣れなところがあり、技術的には未熟な部分もありますが、後の若冲を特徴づける精緻な表現へのこだわりが見られます」
![雄鶏の首の後ろ部分は白い絵の具が剥落しているが、描写の細かさがよく分かる。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/5/a/-/img_5aefdbce34b6bc6fdd10301de5e2689b184848.jpg)
一部が朽ちて色あせた蕪の葉のそばでくつろぐ雌鶏と、雌鶏に猛烈にアピールするかのように首を大きく下に向け、おどけて派手な動きを見せる雄鶏。
この牧歌的な情景は、若冲の愛した動植物たちが穏やかに暮らす、平和な楽園なのかもしれません。
「蕪と双鶏図」は2020年3月より福田美術館で開催の「若冲誕生 ―葛藤の向こうがわ」展にて公開予定。
「若冲誕生 ―葛藤の向こうがわ」
会期 2020年3月20(金曜・祝日)~6月21日(日)
会場 福田美術館
所在地 京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-16
開場時間 10:00~17:00(最終入館16:30)
休館日 火曜日(5/5 火曜日開館、5/7 木曜日休館)
料金 1,300円
https://fukuda-art-museum.jp/
![](https://crea.ismcdn.jp/common/images/blank.gif)
2019.11.19(火)
Text & Photographs=Yumiko Kageyama