おすすめのわらび餅、そして思い出の三色団子

 その中でも一番のおすすめが「わらび餅」。「きなこに砂糖を混ぜるのも、きなこの上からみつをかけて分離するのも嫌いだから、生地に黒糖を練り込んでいます」と濱田さん。食べてみると、ほんのり上品な甘さで、ぷるんとしたコシがあり、噛むうちにすうっと口の中で溶けてしまいます。そんな独特の食感は、本物のわらび粉を40分練って、しっかり火入れしているから。この食感は持ち帰ってもそのまま。硬くなったり、だれて歯触りがなくなることがありません。翌日でもおいしく食べられます。

「わらび餅」備中深煎りきなこ、京都宇治抹茶、黒糖くるみ 各500円
※イートインでは「つくりたてわらび餅」800円

 種類は「備中深煎りきなこ」、「京都宇治抹茶」、「黒糖くるみ」の3種類。「備中深煎りきなこ」は、ほんのり苦味があるほど香ばしい。「京都宇治抹茶」は、抹茶のほろ苦さが印象的。「黒糖くるみ」は、大きなくるみがゴロゴロ入っていて、コリコリした歯応えが楽しい。それぞれ個性的で、他にない味わいです。

 濱田さんは「特に、黒糖くるみは赤ワインと合わせてみてください」とにっこり。「和菓子でお酒を楽しんでもらいたい」というのも、自身が大切にしているテーマなのだそうです。

 大阪で自由な発想で和菓子を作っている濱田さんが、思い入れたっぷりに作っているお菓子が「思いで団子」。保育園児の頃、母親が迎えに来てくれて、帰りにショッピングセンターで買ってもらい食べていたのが、三色団子だったのだそう。「大好きで、おなかいっぱい食べたいと思ったのが、菓子職人になるきっかけ」と濱田さん。

「蒸し菓子 isshin」1個 250円
「思いで団子」1本 150円

 そんな初心の思いを込めて、粒子が細かい米粉を使い、噛むうちにとろけるような食感にして、1年中作っています。まとめ買いする客も多い人気のお団子。私もすっかりファンになってしまいました。

 薯蕷饅頭「蒸し菓子 isshin」には、トレードマークであるヒゲのはえたパンダの焼き印が押されています。何気ないお饅頭ですが、国産のつくねいもを使った生地を長時間寝かせて、もっちり、しっとりした食感を出しているといいます。小さなお菓子に込めた、職人魂を感じます。

「この小さなお店が、都会のオアシス的存在になれたらいい。ひとりでも多くの人が、僕のお菓子を食べて幸せな気分になってくれたら、と思っています」

 和菓子も、今や機械で簡単に作れてしまう時代。そんな今日でも、職人さんが一生懸命手作りしたものを、毎日の生活の中で、おやつとして食べられるのは、何てうれしいことでしょう。

和菓子 isshin
住所 大阪府大阪市中央区北久宝寺町1-2-14 トチノビル1階
電話番号 06-6267-5022

 

 

Column

そおだよおこの関西おいしい、おやつ紀行

生まれも育ちも神戸の生粋の神戸っ子で、長年の関西での取材経験からおいしいお店を知り尽くしている、ライターのそおだよおこさんが、関西の「今、食べてほしい!」というおやつを紹介します。

2012.09.30(日)