「時間またぎ」も米国発祥だった

速水 スピルバーグも最初はテレビ映画だって言われますよね。

大野 デビュー作の『激突!』(71年)の制作経緯はそうです。ただ、日本では劇場公開が先になったんです。

速水 そのテレビ映画を日本が真似して作り始めたんですか?

大野 まずはテレビ朝日(当時は「日本教育テレビ」)の担当者が目をつけて買ったんです。テレビ映画だと、劇場映画と違って放送枠に合わせて作るので、CMのタイミングとか、尺もきちっとそのまま収まるメリットもあって。

速水 そっか、映画みたいに切らないでよかったんですね。

大野 新聞のテレビ欄に合わせて、タイトルが長かったりするのもテレフィーチャーならではですね。

速水 「嫉妬の末に駆け抜ける殺意。フロリダ半島をローカル線で巡る~」みたいな?

大野 そのままではないですけど、そんなです。あと「時間またぎ」(21時からの2時間ドラマであれば、22時になる直前に新しい事件を起こしたり、お色気シーンを挿入するなどして、視聴者がチャンネルを変えるタイミングを失わせるテレビ局の戦略のこと)も向こう発祥で。

速水 視聴率対策もばっちりだったのか。でも、アメリカのテレフィーチャーはさすがに日本みたいな時刻表トリックとかないですよね?

大野 そうですね。多かったのは、ハイジャックものですね。

速水 そうか『大空港』(70年)とかパニック映画ブームの時代ですね。

大野 実際にハイジャックが社会問題になっていたり。で、なぜいつも空港で事件が起きているのかっていうくらいに空港が出てきて。

速水 アラブ系のハイジャック犯が出てくる映画ってたくさんありますけど、あれはイスラエル政府が金を出していたんだってパレスチナの批評家のエドワード・サイードが暴露してますね。チャック・ノリスは必ずイスラエル製のサブマシンガン、UZIでテロリストをやっつけてました。

大野 ロッド・サーリングという人物がいるんですけど、彼は人質や時限爆弾とかをうまくつかった脚本家です。彼が活躍したのがテレビドラマの世界で、基本はサスペンス。

速水 日本だとその舞台が鉄道になるのはおもしろいですね。

2018.10.11(木)
構成=速水健朗
撮影=深野未季
写真=文藝春秋