温泉旅行のジレンマも同時に解決する寝化粧コスメ
b 美白有効成分ビタミンC誘導体配合。エクサージュホワイト ホワイトコンディショニングパウダー [医薬部外品] ¥5250/アルビオン
c フィンランドの自然派コスメブランド・フランシラは有機農法で栽培されたハーブが主原料。カレンデュラなどのオイル配合で、肌にうるおいを与えながらシミや毛穴をカバー。オーガニックトリートメントファンデーション SPF10 ¥6825/フランシラ
日本では大昔から、“通い婚”の習慣があり、源氏物語で光源氏が毎夜毎夜、いろんな女性のもとに通っていたのも印象深いが、実際“夫婦同居”の習わしがあまり確立していなかった時代は意外に長く、夫が妻のもとに通う婚姻形式は、地域によっては明治時代まで続いていたという。妻が夫のもとに出かけていくケースもあったというが、どちらにしても、現代人から見れば、それって“新鮮!”。当然のように“寝化粧”という習慣もそこに生まれたはずで、いわゆる大奥での“御褥”の準備でも、寝化粧がマストだったと考えていい。意外なことだけれど、“寝化粧”は、日本的な慣習が生んだものだったのだ。
そしてもうひとつ、現代も続く“温泉旅行”という独自の文化がある。言うまでもなく、温泉に昼間から入って、そのあと宴会……という。これが、厄介なジレンマを生んでいた。温泉に入ってもなお、しっかり化粧をしているのはカッコ悪い。でもディナーにスッピンでのぞむのも辛い。そこで一見“素顔”に見えるけれど、じつはていねいな薄化粧。場合によってはそのまま寝てしまえるという、肌に負担にならない “もうひとつの化粧”が求められたのだ。つまり、目的と仕上がりは“寝化粧”と同じ。日本の女はもっと本気で、“寝化粧”を追求してみるべきなのじゃないかと思ったのである。
“寝化粧”の鉄則は、言うまでもなく化粧しているように見えないことと、肌への負担がないこと。そういう意味で、“元祖そのまま眠れるファンデ”として話題を集めたのが、フランシラのオーガニックファンデだった。皮ふ呼吸を妨げずにハリを与えて、塗れば塗るほど若肌になれるというコンセプト。なのに欠点カバーはきちんとやってくれる。BBクリームもこのジャンルに加える考え方もあるけれど、最近のUVカット効果が高いものはやはり避けたい。
一方、かつてそのものずばりの“寝化粧コスメ”をヒットさせた歴史があるアルビオンからデビューした“美白パウダー”も寝化粧美白と呼んでいいもの。普通のおしろいのように使うと、美しい透明感と明るさをもたらすのにそのパウダー自体が美白成分を含んでいるのだ。だからまさに塗れば塗るほどキレイになる。
同様に、おしろいなのにナイトケアという、生まれながらの“寝化粧”として生まれたのが、元祖ミネラルパウダーをつくったベアミネラル。これが“睡眠美容おしろい”としてアメリカで大ヒットしている。見た目に欠点を目立たなくするのと同時に、パウダーだからこそ、肌を再生する成分を高濃度配合できたという。その結果、ベッドの中でもキレイなまま朝を迎えて、起きがけの肌も生き生きすべすべ、という新しい美容サイクルができあがるのだ。自分ひとりの時も使いたい寝化粧コスメたち。でもこれがあれば、もっと攻めの恋ができるという人もいるはずだ。
Column
齋藤 薫 “風の時代”の美容学
美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍する、美容ジャーナリスト・齋藤薫が「今月注目する“アイテム”と“ブランド”」。
2012.08.26(日)