台本の活字を自分で浮かび上がらせて
作っていく映画の世界

――あえて訊きますが、「この仕事を面白い」と思った、いわゆる転機となった作品を教えてください。

 今まで役者をやらせてもらった人生を振り返ってみると、ひとつの作品を乗り越えたからといって、次の作品が楽になったというのが一回もないんですよ。そんななか衝撃だったのが、『ぼんとリンちゃん』でした。リハーサルに2カ月かけて、その後もじっくり撮っていった。あんな何十回もダメ出しされることもなかったですし。自分のなかで、たくさんのことを吸収できる期間で、スゴく贅沢に勉強させていただいたという想いがありますし、いちばん自分の血肉になった作品である感じがします。それに自分が出演した作品って、気恥ずかしさもあって1回ぐらいしか観られないんですが、『ぼんとリンちゃん』と『逆光の頃』って、そこにいるのが自分じゃないみたいな感覚で観られるんです。

――先ほど、「小林監督の作品で演じるキャラは自分に近い」と言っていましたが、それと正反対なことですよね。

 そうなんですよ! 自分に近い役を演じているのに、自分とは全然違う人に見える。その面白さみたいなもので、何度も観たくなってしまう。できれば、映画館の暗闇の中で。小林監督から「撮影現場だけでなく、映画館でも音や光の調節をしている」という話を聞けば聞くほど、映画館で観たくなりますね。前はそんなに映画を観るタイプじゃなかったんですが、この仕事をやらせていただくようになって、映画館の暗闇で作品を観ているときに、スクリーンの世界に引きこまれるような感覚が素敵だと思うようになりましたし、2時間でそれを体感できることも素晴らしいと思うんです。それができる仕事に、自分が就いていることが本当に嬉しくてしょうがない。台本に書いてある活字を自分の力で浮かび上がらせて作っていく世界をもっと楽しみたいと思います。

――18年公開予定作の一本『虹色デイズ』では、カルテット主演の一人を務めますが、現場はいかがでしたか?

 キラキラした青春映画ですし、周りの共演者があまりにキラキラし過ぎて、高杉真宙がなくなってしまいそうです(笑)。あと、清原さんもそうですが、年下のコとの共演が増えてきて、まるで娘や孫を見るような感覚になっているんです(笑)。全然、先輩っぽくはないんですが、「そうだよね~」みたいな目線になる。ここ最近、「フレッシュさって、何なんだろう?」と思っていたんですが、「この若さだ!」って思いました。

2017.12.22(金)
文=くれい響
撮影=橋本 篤
スタイリスト=石橋修一
ヘアメイク=堤紗也香