今は単純に仕事を楽しんでいる
――そのときに共演した清原果耶さん繋がりで、ドラマ「セトウツミ」の話もお願いします。まずはオールアップした感想を。
オールアップの日まで大変でした。本当に……大変でした(笑)。『逆光の頃』では京都弁に苦労して、今度は大阪弁で、どちらも関西弁の括りですけれど、完全に別モノでしたね。役も全然違いましたし。それに「セトウツミ」って、とてもリアルな話ですが、自分の中ではどこかリアルと繋がらないんです。あの高度な会話を関西弁でするには、しっかり自分の中にセリフを落とし込まなきゃいけなかったし、そのうえであのテンポと間ですから。ただ、そのテンポと間というものは自分が役者として、長いあいだほしかったものなんです。リズム感そのものを、自分が持っていないので……(苦笑)。今回「セトウツミ」に出演させてもらえることで、それも勉強できると思ったんですが、また大きな壁だったと思います。
――以前(15年7月)のインタビューの最後では、「短期間でしっかり相手の演技を受けることのできる俳優になりたい」と発言されていましたが、特に「セトウツミ」を観るかぎり、その壁はクリアされたのではないでしょうか?
いや、いやいや……。でも、それって、この仕事をやっていくうえで、課題のひとつだと思うんですよ。普段の会話自体が、相手の言葉を受けて、出していくものですし、どのセリフも会話でできていますから。
――ちなみに、“作品ごとに乗り超えるべき壁がある”と発言されていますが、それがしっかり繋がったことで、今回の受賞に結びついたような気もします。
そうやって言っていただけることは僕自身、嬉しいことですし、安心もするんですけど、自分の中で納得はしないんですよ。それは自分に厳しいとかというんじゃなくて、自分が単純に楽しみながら、今この仕事をやっているから。以前は「これは仕事」と思いながらやっていた分、どこかできていなかったと思うんですが、今は役をやらせていただいているという感覚が強くて、単純に楽しい。僕、美味しいものを食べたときに、何がどう美味しいか言えないんです。それに似ている気もするんです。つまり、自分で納得する部分が出てきてしまうと、楽しめなくなってしまうんじゃないかって。ただ辛かった状況も、振り返ると楽しい。完全にM体質ですね(笑)。
2017.12.22(金)
文=くれい響
撮影=橋本 篤
スタイリスト=石橋修一
ヘアメイク=堤紗也香