珊瑚の島の海を眺め
種子取祭を思う

珊瑚の白砂に美しい海が広がるコンドイ浜。晴れ上がったこの日は海水浴の人も多く訪れていた。

 竹富島は外周約9キロ。珊瑚礁が隆起して出来た島だ。青く美しい海は、ちょっと沖に出れば素晴らしいダイビングやシュノーケリングが楽しめる。

 ただ、島の浜は、海流が強くてコンドイ浜以外は泳ぐことはできないが、「星のや竹富島」からすぐ歩いていけるアイヤル浜の日の出、夕陽が美しい星砂のカイジ浜など眺めているだけで癒される。

 晴れた午後に賑わうコンドイ浜へ観光客を運ぶバスを運転する上勢頭(うえせど)篤さんは、竹富公民館の館長も務める。島民あげて奉納芸能を捧げる種子取祭について話をうかがった。

にこやかに種子取祭やうつぐみの話をしてくださった竹富公民館館長の上勢頭篤さん。

「竹富島は、昔は、穀物を琉球の国に税金として納めていた農業の島。豊作になれば島も潤い、みんなも幸せです。なので、五穀豊穣を祈る種子取祭は、最も重要なお祭り。畑に鍬を入れて、種子を蒔いて、それが実るよう、女性は踊りで、男性は狂言で神様に芸能を奉納します」

 自分たちのための奉納芸能なので、みんな一所懸命。島総出で毎日夜遅くまで練習するのだという。

「祭りは、共同体として島の統一を図ったり、世代に伝統を引き継ぐ教育の場にもなっています。竹富島では、“うつぐみ”という“みんなで心を結んで協力しあう”という意味合いの言葉を大事にしていて、その年の干支の人は、島外にいる人も種子取祭には必ず帰島して祭りに協力します」

 と、ここで、奉納で歌う古謡の一節をいい声で聞かせてくださった。

島のあちこちに花開くハイビスカス。台風の後もまたすぐ花を咲かせるたくましさは島の人のよう。

 「竹富島の“うつぐみ”はオープンでもあります。お祭りの時は、島外から来られた方もお祭りに参加して、一緒に神様にお願いをしていただけます。奉納芸能を見ていただくことはもちろん、家々を回って、ピンダコというタコとニンニクの和え物および泡盛を豊穣を祝っていただく、世乞い(ユークイ)という儀式にも参加できます」とも語る。

 つまり、種子取祭は、島に来たみんなで祝う祭りなのだ。

 「星のや竹富島」でも2017年10月30日(月)・31日(火)には奉納芸能鑑賞ツアー(4,000円・定員8名/要予約)、30日(月)の夜には世乞い体験ツアー(無料・定員16名/要予約)を催行する。

種子取祭の奉納芸能。
そしてユークイ。みんなで祝う“うつぐみ”の祭りだ。

 青い空に青い海、上勢頭さんや島仲さんの笑顔から感じるうつぐみの心。竹富島の魅力にひかれた旅。機会があれば、ぜひこの種子取祭やこの祈りが実った時期(毎年9月頃)に行われる結願祭に訪れて、うつぐみの一人になってみたいと思った。

星のや竹富島
所在地 沖縄県八重山郡竹富町竹富
電話番号 0570-073-066
http://hoshinoyataketomijima.com/

小野アムスデン道子 (おの アムスデン みちこ)
ロンリープラネット日本語版の立ち上げより編集に携わったことから、ローカルグルメや非日常の体験などこだわりのある旅の楽しみ方を発信するトラベル・ ジャーナリストへ。エアライン機内誌、新聞、ウェブサイトなどへの寄稿や旅番組のコメンテーター、講演などを通して、次なる旅先の提案をしている。
Twitter https://twitter.com/ono_travel

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2017.10.22(日)
文=小野アムスデン道子
撮影=鈴木七絵