世界遺産のレフカラレースと
繊細な銀細工

「ルヴィス・レース・アンド・シルバー」は、レフカラ村のお店のなかでもひときわ大きな建物だ。

 ユネスコの無形文化遺産にも登録されているレフカラレースは、先祖代々、母から娘へと受け継がれてきた伝統手工芸。

 麻の布をベースに木綿の糸で刺しゅうを施したレースだ。古代ギリシャやビザンティンに見られたような、菱形などの幾何学模様、十字架、草花、虫、川などをモチーフにしてデザインされている。

 レフカラレースの始まりは500年以上も前のこと。ヴェネツィア統治時代の15世紀頃、ヴェネツィアの貴族達が保養のために気候のいいレフカラ村を訪れた。村の人々が貴婦人たちからレースを学び、さらに美しくて繊細なレースを編み出したのだ。

 土産物店のなかでも、村の中心近くにある比較的大きな「ルヴィス・レース・アンド・シルバー」は、ルヴィス夫妻と息子さんの3人が営むお店。村内で作られた数多くのレフカラレースと銀細工が所狭しと並んでいる。

自慢のレースを見せていただいた。ご夫婦と息子さんの3人で経営している。左からご主人のミハエルさん、奥さまのドゥラさん、息子さんのデモスセニスさん。
左:下絵を描く方法を見せてくれた。ペンと糸をコンパスのように使って、麻の布に巧みに幾何学柄を描いていく。
右:縁の刺しゅうもレフカラレースの特徴のひとつ。細かくて繊細な手工芸品だ。

 あまりに美しく細やかな手仕事のレースに、思わず「これを作るのにどのくらいの時間がかかるの?」とご主人のミハエルさんに訪ねると、「1メートル四方のレースを仕上げるのに半年以上はかかるね」という。「なんてたいへんなこと!」と驚くと、「まあ、朝から夜までずっと作業しているわけではないけれど(笑)」とのこと。

通貨がユーロになる前には、キプロスの1ポンド札にはレフカラレースが描かれていた。

 お話を伺っているとき、ちょうどレースが届いた。長年レースを作り続けてきた高齢女性の最後の作品だという。後継者が減っているのが悩みの種だとか。このすばらしい伝統がいつまでも受け継がれていくことを切に願った。

レフカラ村は、レースだけでなく、銀細工でも知られている。
ザクロのアクセサリーは、キプロスでは幸運を招くとされている。

 レースが女性の手仕事なのに対し、18世紀から作られるようになった銀細工は男性が作っているという。

 「ルヴィス・レース・アンド・シルバー」では、アクセサリーのほか、キリスト像やマリア像のプレートや銀食器などを購入することができる。女性にお勧めなのは、ザクロの実の形をしたアクセサリー。ラッキーアイテムなのだという。

デモスセニスさんは、アクセサリーの金具をその場で調整してくれる。職人が経営するお店ならではだ。

Rouvis Lace and Silver
(ルヴィス・レース・アンド・シルバー)

所在地 Gregori Afxentiou 10, Pano Lefkara, Larnaca
電話番号 24-342-559
http://www.mrouvis.com/
https://www.facebook.com/Rouvis-Lace-and-Silver-334920980039030

2017.10.24(火)
文・撮影=たかせ藍沙