石器時代のケルトの村に迷いこむ

いきなり石器人のお出迎え。

 カーディガンから内陸部へ向かい、ペンブロークシャー・コースト国立公園の中にある「キャステル・ヘンリーズ」というケルトの村を訪れたのだが、ここがただの村ではなかった!

ここからは別世界という案内。

 一気に2000年以上タイムトリップして石器時代のケルトをまんま再現していて、ガイドは、顔にケルトの入れ墨を施し、古いウールの織物をまとい、簡素に縫い合わせただけの靴で登場。村に入る橋を渡る時には「ここからは場所の名前もヘドウィン(向こうの土地)と変わります」と石器人になりきり気分のツアーが楽しめる。

杭と杭の間に枝を渡していって壁を作るやり方に感心。
石器人の家の造りはシンプルだが理にかなっている。

 敷地内には、枯れ枝を積み上げて造った家が点在して、靴や編みかご、織物を作っていたり、敵の侵入を防ぐ罠や石を飛ばす武器を見せてくれたり。鉱山資源があまりなく、木で何でも作っていた時代の生活の工夫が窺える。

槍の長さも目的別に違う。「こんな風に獲物を狩るのよ」とポーズ。

 家の中で火を焚いていたのは、燻製を作る目的もあるが、虫やねずみよけにもなっていたことや、短い槍は狩猟、長い槍は戦闘と、目的が違うことなど、それぞれ理にかなっていて納得。身の回りのモノ作り、毛糸から肉までが財産ともいえるヒツジのお世話など、毎日忙しいと石器人のぼやきも。

 大人5.5ポンド、子供3.5ポンドでかなり楽しめる。

確かに石器時代に時計はない! 日が昇れば起きて、沈めば眠る、が自然。

Castel Henllys(キャステル・ヘンリーズ)
所在地 Meline, Pembrokeshire, SA41 3UR
電話番号 01239-891319
http://www.pembrokeshirecoast.org.uk/

90色の糸を使ってできる美しい編み物。

 石器時代の村を後にしてさらに西へ。途中、創業105年という羊毛編み物工場「メリン・トレグウィント・ミル」を訪れ、ほおずりしたいほど柔らかく、美しい色合いの編み物を見る。

セントデイビッズ・クロスという伝統の柄。

Melin Tregwynt Mill
(メリン・トレグウィント・ミル)

所在地 Castlemorris, Haverfordwest, Pembrokeshire, SA62 5UX
電話番号 01348-891225
https://melintregwynt.co.uk/

左:海辺に佇むパブ「スループ・イン」は、創業1743年!
右:おいしいフィッシュ&チップスに出会った。

 また、1743年からやっているという海辺の村のB&Bのパブ「スループ・イン」で食べた名物のフィッシュ&チップスはことのほかおいしかった。

Sloop Inn(スループ・イン)
所在地 Porthgain, Haverfordwest, Pembrokeshire, SA62 5BN
電話番号 01348-831449
http://sloop.co.uk/

 そして、アーサー王の映画に登場するようなウェールズの風景と様々な伝説に触れる旅の最後は、南西端のセントデイビッズへ。

「トゥール・ア・ヴェルン・ホテル」のコンテンポラリーアートを生かしたインテリア。
ディナーはラムのグリルで。

 古い建物を改装し、100作品以上のコンテンポラリーアートが飾られたモダンな雰囲気の「トゥール・ア・ヴェルン・ホテル」に宿を取る。

聖人の偉業が窺える荘厳なセントデイビッズ大聖堂。

 ここは、ウェールズの守護聖人である聖デイビッドの眠る荘厳なセントデイビッズ大聖堂を中心とした落ち着いた街だ。石器時代に移り住んだケルト系民族が、ローマ人の侵攻や中世のサクソン人との戦いを経て現代にまで至る、そんな歴史を振り返るのにふさわしい場所だった。

Twr y Felin hotel
(トゥール・ア・ヴェルン・ホテル)

所在地 Ffordd Caerfai, St David, Pembrokeshire, SA62 6QT
電話番号 01437-725555
https://www.twryfelinhotel.com/

 『キング・アーサー』の映画に登場する、むき出しの岩肌、深い森、洞窟や流れの激しい川などの風景は、確かにウェールズらしい。そんな荒々しい自然の中で歴史を刻み、数々の城を作ったウェールズの人達は今でもとても誇り高い。

 古い言語であるウェールズ語を守り、詩や音楽を愛する土地柄は、イングランドとはまた異なる感動も与えてくれたのだった。

【取材協力】
英国政府観光庁 

https://www.visitbritain.com/jp/ja

小野アムスデン道子 (おの アムスデン みちこ)
ロンリープラネット日本語版の立ち上げより編集に携わったことから、ローカルグルメや非日常の体験などこだわりのある旅の楽しみ方を発信するトラベル・ ジャーナリストへ。エアライン機内誌、新聞、ウェブサイトなどへの寄稿や旅番組のコメンテーター、講演などを通して、次なる旅先の提案をしている。
Twitter https://twitter.com/ono_travel

2017.06.23(金)
文・撮影=小野アムスデン道子