乾かしてはがす→貼って潤す→塗るへ!
かつて、マスクは“リピートされない厄介なアイテム”と言われた。ところが21世紀に入って、流れは一変。マスクブームがやってくる。ズバリ、乾かしてはがすマスクが、貼って潤すマスクに大きく変わったから。言うまでもなく、フィルム状のマスクに代わって、シートマスクが登場したからなのだ
フィルムマスクは、塗って乾くのを待ち、文字通りフィルム状の膜ができたら、ベリッとはがす。手間がかかるし、はがすのはちょっと痛い、何よりも潤いまでもっていかれちゃう気がして、何だか納得できないという声が多かった。はがすマスクはもともと、与えるよりまず取り去って、肌を明るくする発想だったわけだ。
そこにシートマスクの出現でマスクの定義ががらりと変わる。シートに含浸させた美容液を、肌へそっくり浸透させる。手間がかからず、痛みもなく、潤いもキープできる……だから、それならばと大ブレイク。しかしこのシートマスクも改良と進化を重ね、行き着くところまで行って、一種の飽和状態に。
今注目の3つの塗りマスク。
a 再生機能が衰えた肌に、集中的なデトックス効果と肌の細胞再生をもたらすセラムマスク。
カプチュール トータル ワン エッセンシャル マスク 50ml ¥12075/パルファン・クリスチャン・ディオール
b あらゆるエイジングサインをケアし、肌に速効的にエネルギーチャージをもたらす10分間のトリートメントマスク。
オーキデ アンペリアル マスク 75ml ¥45675/ゲラン
c 肌の疲れ、エイジングサインに働きかけ、15分でふっくらなめらか、若々しい活力のある肌に導くクリームマスク。
ブラックローズ クリーム マスク 61g¥14700/シスレージャパン)
そして、この2年ほど、さすがのシートマスクもトーンダウンしていたかと思ったら、今度は乾かない、はがさない、洗い流しもしない、塗ったものはすべて肌の中に押し込むという新発想の“塗りマスク”が台頭してきているのだ。
じつは“塗りマスク”にも以前からクリーム状の“与えるタイプ”があるにはあったが、洗い流してしまう使用法で、それがどうも解せないという声も多かった。
でも最近の“塗りマスク”は、洗い流さない。基本的に中に入れてしまう、入らなかった分は軽く拭き取ったり、ティッシュで抑えたり。そもそもが、中に押し込むものとして設計されているから、肌に残してもかまわない。ムキになって取り去る必要はまったくないのだ。
重要なのはここ。最終的に取り去らなきゃならないものに対し、女はシビア。だからクレンジングに関しては、徹底してお金をかけないという人が多いのだ。
逆に中に入れていくものなら、ちゃんとお金をかけてもいいし、気に入ったら毎日でもやりたい。結果、リピートする。同じマスクでも、私たちの想いがまるで違ってくるのである。
今さらだけれど、マスクの原理は肌表面を密封して、成分をより深くまで届けること。最近の塗りマスクは“密封膜”そのものも一緒に奥へ押し込んでしまうから、女はもっと嬉しいのだ。そうそう、シートマスクははがしたシートを1回で捨てるのがもったいなくて、腕や脚に使う人、こっそり2回使う人……がいたが、それもシートマスクに対しての潜在的な不満の表れ。だいたいが、1枚千円なんて高すぎる!
そういう意味で、中に入る“塗りマスク”には女たちも納得した。特に今注目の3つの“塗りマスク”は、高効果成分をがっちり中に入れる、ゴージャス極まりない逸品揃い。ディオールはリンパマッサージのできる大きなスパチュラつき。ゲランはブラシで塗り、やっぱりリンパマッサージ。シスレーは15分じっくり入れ込む癒し系。いずれも使用後肌がふっくら、シワも毛穴も目立たなくなり、化粧のりがびっくりするほど良くなって、毎日感動。シートマスクは長く貼り続けるとかえって肌を乾かすという問題もあったから、総合的に“塗りマスク”の勝ち? おすすめの方法としてはすべてが入ってしまうまでそのまま放置20分でも30分でも。さらに肌はふくらんで、やめられなくなります!
齋藤薫 Kaoru Saito
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。女性誌において多数のエッセイ連載を持つほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『人を幸せにする美人のつくり方』(講談社)、『大人になるほど愛される女は、こう生きる』(講談社)、『Theコンプレックス』(中央公論新社)、『なぜ、A型がいちばん美人なのか?』(マガジンハウス)など、著書多数
Column
齋藤 薫 “風の時代”の美容学
美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍する、美容ジャーナリスト・齋藤薫が「今月注目する“アイテム”と“ブランド”」。
2012.02.01(水)
text:Kaoru Saito
photographs:Yasuo Yoshizawa(still life)