灌木地帯に山火事が不可欠な理由とは?
ケープタウンから南下すること約50キロ。喜望峰へ向かうルートは、この地方固有の植物の宝庫である、ケープ半島のテーブルマウンテン国立公園内を走ります。ここは「ケープ植物区系保護地域」として世界遺産に登録されている、世界六大植物区のひとつ。植物区としての面積は最も小さいものの、植物の種類は熱帯雨林を超える豊かさを誇っています。
そんなケープ植物区の大きな特徴となっているのが、“フィンボス”と呼ばれる灌木地帯。ケープ植物区で見られる植物8600種のうち、約80%がフィンボスに生息しています。
と聞くと、肥沃な土地のイメージですが、実はその逆。強い風が通年吹き、夏は乾燥して気温が高く、冬は多雨の地中海性気候。定期的な山火事が不可欠で、人の手によってあえて燃やすこともあるとか。この山火事の後に、地中で眠っていた種が一気に発芽するのだそうです。
喜望峰に向けた車窓に広がるのは、灌木に覆われた、うねった小高い丘や平原など、乾いた風景。可憐な小花を株いっぱいに付けたツツジ科の“エリカ”やイグサに似た“レスティオ”が彩りを添え、7~10月は南アフリカの国花キングプロテアも咲き乱れます。植物ファンにとって、ここは憧れの植物王国なのです。
2016.11.20(日)
文・撮影=古関千恵子