昔から自分の側にいてくれた“馴染みの存在”が救ってくれました

――近年はミュージシャンの方で休養を発表する方も増えていますし、一般社会で働いている人の中にも同じように“しんどさ”を感じている人、実際に休まざるを得なかったという人も多いと思います。崎山さんはどのようにして今の自分にたどり着くことができたのですか?

 本当に少しずつなんです。その“少しの力”はずっと昔から自分の身近にいた友人やぬいぐるみとか、そうした馴染みのある存在がくれたように感じています。

 アルバム『i 触れる SAD UFO』のジャケットにもなっていますが、僕はモンチッチが大好きで。小さい頃から一緒なので、10年以上ともに過ごしているんです。カネコアヤノさんの『燦々』という曲に「日に焼けたぬいぐるみたち この暮らしの事情を誰よりも知ってる」って歌詞があるんですが、まさにその通りで、貫禄を感じるぐらいの風格なんですけど(笑)。モンチッチの表情が、自分に安らぎを与えてくれたり、何かを語りかけてくれたりするように感じたんですよね。

本の世界に飛び込むことで“今”から離れることができた

――そうした馴染みの仲間から力をもらって、何もする気が起きない日々も少しずつ変わっていったんですね。

 最初にできるようになったことが読書でした。元々読書が好きだったのですが、本を読むことで“今”とは別の世界線に逃げ込むことができて、すごくいい方向へ進んでいきました。

 本って、自分のペースで向き合えるじゃないですか。気が向いた箇所だけ読んでもいいし、立ち止まって読み直すこともできる。最初は雑誌など媒体を問わず、とにかく活字を追っていただけだったんですが、少しずつ気力が湧いてきた時に「よし、名著と呼ばれるものを読んでみよう」と思ったんです。そこで初めて村上春樹さんと村上龍さんの作品に触れて、物語の世界にどっぷり没入しました。

 『風の歌を聴け』『ダンス・ダンス・ダンス』『コインロッカー・ベイビーズ』『限りなく透明に近いブルー』……。伊坂幸太郎さんの『重力ピエロ』や、東野圭吾さんの『透明な螺旋』も読みました。そうした大きなストーリーに抱かれ、貪るように活字を追っているうちに、どこかへ行ってしまっていた自分の一部を再び呼び戻せた感覚がありました。

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