箱庭を愛でる午後、美食の夜

 中庭に足を踏み入れると、そこにはヒメシャラやオオモミジ、アセビといった箱根の山々に自生する植物たちが生き生きと枝葉を伸ばしている。過度に着飾られた庭園ではなく、ありのままの自然の優しさに触れる時間が五感をじんわりと癒してゆく。

 思い思いに寛いでいると、とあることに気づく。ここにはラグジュアリーホテルの格式を演出する“香り”や“音楽”が存在しない。朝露に濡れる草木のにおいややわらかな蝉しぐれなど、自然の気配そのものを味わう贅沢があるのみ。ここに集うゲストの感性に愉しみ方が委ねられているのだ。

 午後の「リビングルーム」では季節の移ろいを表現したオリジナルのアフタヌーンティーを。大きな窓から陽光が差し込む吹き抜けのラウンジで、上質なティーとともに洗練されたスイーツやセイボリーを味わう。中庭で外光を浴びながらのティータイムも一興だ。

 夕刻が近づき、西日が差し込むと、植栽と正面に構える明星ヶ岳の山肌が黄金色に染まりはじめる。山に覆いかぶさる雲の影が「大」の文字の上をゆっくりと流れていく。

土地のストーリーをいただく、シェフの手腕が光るフレンチ

 陽が落ち、館内に優美なろうそくの灯りがともる頃、ディナーの舞台となる「ダイニングルーム — フレンチ」へ。指揮をとるのは開業時から「ハイアット リージェンシー 箱根」の味を極めてきた総料理長・須田毅シェフだ。

 オープンキッチンの活気と香ばしい薫りが漂うなかで提供されるのは、相模湾の新鮮な魚介や足柄の豊かな恵み、そして旬の野菜をふんだんに取り入れたコンテンポラリーフレンチ。クラシックなフレンチの技法をベースにしながらも、軽やかで洗練された一皿には、箱根という風土への深い敬意とシェフの情熱が込められている。ワインアテンダントが提案する世界各国のペアリングとともに味わいたい。

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