だから勉強は外に出てやるのもいい

 では、こうした格差を少しでも埋めるにはどうすればいいのでしょうか?

 1つの答えは、勉強は外に出てやるのもいいということです。

 図書館で勉強するのもいいですし、カフェで勉強するのもいいでしょう。公園で教科書を読むのもいいかもしれません。

 なぜなら、外に出ることで、知識が現実と結びつく瞬間が増えるからです。

 たとえば、経済学の勉強をしているときに、カフェで周りの人々の行動を観察してみます。すると「なぜこの人はこの商品を選んだのか」「どんな価格設定になっているのか」という視点が、経済学の知識を動的にしてくれます。

 地理の勉強をしているときに、実際に街を歩いてみるのもいいでしょう。「この地形はどうしてこうなっているのか」「この地域の産業はなぜこれなのか」という問いを持って歩くことで、知識が立体的になります。

 もちろん、東北に旅行に行くことや、海外に留学することができれば、それは素晴らしいことです。しかし、それができなくても、身近な場所で「外に出る」ことはできます。そうした小さな体験の積み重ねが、知識を動的にし、見えにくい力を育てていくのです。

異文化体験の重要性

 また、自分と違う意見を持つ人と話すことも、非常に重要です。

 第1章で見たように、東大入試は「異なる視点から物事を考える力」を問います。

 たとえば世界史の問題では、7つのキーワードをつなげて、3つの文化圏の成立過程を説明することが求められました。

 これは、単に知識を覚えているだけでは解けません。異なる文化の視点から物事を捉え直す力が必要なのです。

 そして、その力は、実際に異文化に触れる経験から育ちます。

 海外旅行に行くことだけが異文化体験ではありません。

 自分と違う価値観を持つ友人と話すこと、自分と違う意見の本を読むこと、自分と違う世代の人と交流すること。こうした小さな異文化体験の積み重ねが、視野を広げ、柔軟な発想を育てるのです。

非認知能力が見えにくい力を支える

 ここまで見てきたように、見えにくい力を育てるには、ただ机に向かう勉強だけではもったいないかもしれません。体験や経験といった、非認知能力の領域も深く関わっています。

 非認知能力とは、テストでは測れない力のことです。

 好奇心、粘り強さ、協調性、自己肯定感、コミュニケーション能力。こうした力が、非認知能力と呼ばれます。これらの力が、見えにくい力を支えているのです。

 好奇心があるから、「なぜだろう?」と問いを持ち続けることができる。

 粘り強さがあるから、わからなくても考え続けることができる。

 協調性があるから、自分と違う意見を受け入れることができる。

 自己肯定感があるから、間違いを恐れずに挑戦することができる。

 こうした非認知能力が土台となって、見えにくい力が育っていくのです。

 逆に言えば、どれだけ勉強しても、非認知能力が育っていなければ、見えにくい力は育ちにくいのです。

» 【前篇を読む】「あの人、勉強はできるけど地頭は悪いよね」地頭の“良い・悪い”はどうして生まれるのか?東大の入試試験から見る《地頭力の正体》とは

西岡壱誠(にしおか・いっせい)

東大生教育集団カルペ・ディエム代表。1996年生まれ。偏差値35から東大を目指すも、2年連続不合格。3年目に勉強法を見直し、偏差値70、東大模試で全国4位になり、2浪で東大合格を果たす。2020年に東大生教育集団・株式会社カルペ・ディエムを設立、代表に就任。偏差値35から東大合格を果たしたノウハウを全国の学生や学校の教師たちに伝えるため、全国12の高校で「リアルドラゴン桜プロジェクト」を実施、高校生に思考法・勉強法を教えているほか、教師に指導法のコンサルティングを行っている。
『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく東大読書』(東洋経済新報社)など著書多数。

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2026年7月10日
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