「えらか先生、連れて来たよ」

 昭和52年頃、元県立長崎図書館長の案内で吉村昭が「福壽」の暖簾をくぐった。

 爾来、長崎へ行くと、歴史小説執筆のための取材の腹ごしらえで必ず昼時に立ち寄るように。

 ちゃんぽん麺を具材と一緒に炒めた太麺の皿うどんを好んで食べた。

〈皿うどんをひと箸、口に入れた瞬間、ひどく幸せな気分になる。長崎に来てよかったな、と胸の中でつぶやく。また、これほどうまい食物は珍しい、とも思う〉(『わたしの流儀』新潮文庫)

 油のくどさがなく、蒲鉾、野菜、魚介類が麺と絶妙にからまり、一度食べるとやみつきになる。

 生涯で107回長崎を訪れ、『戦艦武蔵』や「磔」など同地が舞台の小説を多く残した。

 そんな吉村の長崎愛の一端を味わえる逸品だ。

福壽

所在地 長崎市新地町2-5
電話番号 095-821-3032
営業時間 11:30~14:30、17:00~20:30
定休日 日曜・祝日

※初出:文藝春秋 2023年8月号
※記載内容は変更されている場合もあります

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